第28回 少女漫画的に読み解く『風の谷のナウシカ』

先週の6/6、「金曜ロードショー」で放送されてましたね、『風の谷のナウシカ』
もう何度も観てるのに、DVDも持ってたりするのに、TVでやってるとついついはりきって視聴してしまうフシギ。その度に興奮するわ感動するわで、宮崎アニメの偉大さについては語りきれないわけでして。

1984年に公開された『風の谷のナウシカ』は、ご存知のように漫画版があります。1982年に「アニメージュ」で連載がスタートし、何度かの休載を挟みながら、1994年に完結しました。

映画版も、2時間のアニメーションとは思えない深いテーマなんすが、漫画版はさらに踏み込んだ内容。自然、人類、思想、『ナウシカ』で描かれるものはどれも深遠です。

このレビューでは、宮崎駿がナウシカを通じて見せた哲学についてじっくり分析してみようと……なわけはなく、そんなのは高尚な人々がすでにやってる上、アタシごときができるわけないんで、乙女的な読み方ってヤツを語っていきます。乙女だから!

小学生時分は「りぼん」を読むように漫画版ナウシカを読んでおりまして、やっぱ場面にナウシカとアスベルがいるだけで3倍ワクワクしてました。どーしてもトキメキ方面に意識がいっちゃうんですよね、乙女だから!(大事なことなので2回いいました)

では早速、ナウシカとアスベルふたりの出会いから最終回までをなぞっていきます!


●コルベットに乗るナウシカと、コルベットを襲うアスベル

ナウシカ「ラステルの兄さん もう殺さないで……」
アスベル「だれだ そこにいるのは!?」
―――1巻106ページ

トルメキアに国を滅ぼされ、復讐に燃えるアスベルは、ナウシカたちが乗っているコルベットを襲撃します。風の谷の姫ナウシカと、ペジテの王子アスベル、はじめての接触。襲う者と襲われる者。あいまみえるはずもないのに、アスベルは心の中で少女ナウシカの姿と出会います。しょっぱなからドラマチック!

●アスベルを蟲から救いだすナウシカ

ナウシカ「きみは殺しすぎた 上を見ろっ!!」
アスベル「ワァーッ なんて数の翅蟲だ!!」
ナウシカ「もう光弾も蟲笛もきかない」
―――1巻122ページ

コルベットに撃ち落とされ、腐海の蟲に襲われるアスベルを助けたのは、颯爽とあらわれたナウシカ! メーヴェの操縦が熱い!

しかし、蟲との衝突でマスクを奪われ、ナウシカは気絶。復讐の鬼と化し、人も蟲も殺してきたアスベルが、彼女だけは必死に助けようともがきます。お互いが命の恩人だなんて、ディステニー!

●ナウシカとアスベル、チコの実を食べて一夜を

ナウシカ「とても栄養があるのよ 私の谷では気つけにも使うの」
アスベル「味はともかく長靴いっぱい食べられたらと思うね」
―――1巻134ページ

腐海の底に落ちたふたりは、互いの素性を明かし、腐海の役目について語り合います。出会いから即、急接近! これは完全にフラグ完了! あとはエンディングまで、シナリオをスクロールするだけだ。まったりカップル成立〜。

朝を迎え、修理したメーヴェで腐海を脱出するふたり。ひとつのマスクをふたりで分かち、風に乗ってファラウェイ……。

●抱擁するナウシカとアスベル。そして、長い別れの時間が……

アスベル「メーヴェのふたり乗りはもうコリゴリだよ
 いくんだナウシカ みんなを説得してくれ
 ぼくはここでがんばってみるから」
―――2巻36ページ

腐海を脱出したものの、トルメキアと敵対する土鬼(ドルク)の船に見つかってしまったナウシカとアスベルは、捕らわれの身となります。
そこで、土鬼の僧正から、風の谷が戦場になると知るナウシカ。僧正を人質に取り、谷へ向かおうとします。
ふたり乗りのメーヴェでは逃げ切れないと悟ったアスベルは、ひとり、敵の船に残るといいだします。彼の言葉に胸打たれたナウシカは、アスベルを抱きしめ、振り返らずに船を飛び立つのです。この無言のやり取りが、嗚呼!

離れ離れになったふたりは、やがて再会とともに「もう2度と離れないよ」と永遠の愛を誓うんだわ。そういう前フリですよね、これは!

……ええ、この頃はそう思っていたのです。そう、信じていられたのに。

●ふたりをつなげる白い包帯

ミト「……!? そのほうたいは?」
ナウシカ「コレ… ううん もうへいきよ
 アスベルがしてくれたの… 彼のシャツだわ」
―――2巻94ページ

王蟲の暴走を鎮め、風の谷を、世界を救ったナウシカは、アスベルと再会しないまま戦場へ旅立ちます。戦争はいつでも愛するふたりを離れ離れにする!

出陣の前夜、腕に巻かれた(腐海の底へ落ちたときにアスベルが巻いてくれた)包帯を、ナウシカはいつくしむように見つめます。今はこれだけが、ふたりが過ごした時間の証……!
もう傷は癒えたのに、仕立て直した飛行服の上に、彼の包帯を巻き直すナウシカ。心はいつもそばにって感じでね!!

嗚呼、なんという深い絆。国を、地球を、未来を見すえるナウシカですが、彼女の心をアスベルが占める割合は大きい。これは安泰ですぞっ。

●ナウシカの恩師に挨拶をすませるアスベル

アスベル「そうでしたか!! あなたがあの人の先生だったとは」
ユパ「いや もはや私のほうが生徒となりつつあるがね」
―――3巻11ページ

土鬼の船に残り、フルボッコにされていたアスベルはどーなっとったんじゃいというと、土鬼兵に変装し、悪い僧会どもの企みをブッ潰そうとしていました。
それはそれで素晴らしいけど、早くナウシカに会いに行ってやらんかーい!

アスベルはこの後、土鬼のケチャという少女と、ユパの3人と主に行動します。ナウシカチームとは、ずーっと別行動。
それぞれの仕事に専念する時期なんでしょうけど……ハラハラッ

●アスベルを想うナウシカ

ナウシカ(王蟲にあいたい… ユパさまや父上や谷のみんなにも……
 …………)
―――3巻80ページ

トルメキア兵たちと、厳しい「戦場」に立たされるナウシカは、ふと故郷を想い返します。無言で腕の包帯を触れる指。あぁ、誰のことを考えているのか、よーくわかるよ! 早く来てー、アスベルー!

●森の人セルム登場

ユパ(そうかナウシカだ この少年のまなざしはナウシカにそっくりだ)
―――3巻87ページ

すでに物語の渦の中に、映画版に出てこなかったケチャという少女が登場しているんですが、ここでまた新たな人物参入です。仙人のように腐海で生活する種族、森の人のセルムです。

このナウシカくりそつイケメン少年が、ナウシカとアスベルの間に思わぬ変化を!!?

●ナウシカを想うアスベル

アスベル「エッ ぼくのしてあげた包帯を!?」
ミト「ハイ あなたの安否をとても案じておられました」
ナウシカ(回想)「忘れたことないわ この包帯をしてくれた人のこと」
―――4巻48ページ

谷の人々と会うことに成功したアスベルが、ミトから聞くナウシカの話に胸を熱くする場面。彼女を想うアスベルの瞳の猛々しさよ! 深い愛を感じるぜー!
そんなアスベルを見て、疎外感を覚えるケチャ。いや、ケチャはケチャで、自分を救ってくれたイケメン・セルムにけっこう惚れていたようなんですが……。

●ナウシカとセルム、出会い

セルム(私の名はセルム この森はあなたの心の中の森でもあるからです)
ナウシカ「心の中の……? ではこの不毛の世界も私のもの………」
セルム(あなたと秘密を分かちあうために私は来ました)
―――6巻74ページ

現実に絶望し、深い眠りに落ちてしまったナウシカを呼び起こしたのは、ユパ様でもなく、アスベルでもなく、セルムでした。彼女は自分の心の森でセルムと出会い、目覚めます。

ナウシカ「セルム様 この人が声をたてて笑ってます!!」
セルム「ハハハ ナウシカもです 笑顔がとてもいい」
―――6巻83ページ

起こすだけじゃ飽き足らず、粋なセリフでナウシカを赤面させよるぞ、このイケメン!!

ヤバイ……この男、女心の隙間に入り込むのが、あまりにも上手すぎる……!

●ナウシカ、プロポーズを受ける

セルム「あなたが清浄の地を汚すまいともどって来てくれてほんとうにうれしかった
 その時 判ったのです この旅はあなたと会うためだったと
 私と共に生きて下さい」
ナウシカ「ありがとう とてもうれしい
 でも あなたは生命の流れの中に身をおいておられます
 私はひとつひとつの生命とかかわってしまう…」
―――6巻97ページ

現実に戻ったと思ったらこれかよ!! 即プロポーズってどういう神経してんだよ、スタッ、フー! じゃなかった、森の人! このイケメン手際よすぎ!

とりあえず丁重にお断わりしたものの、自分を救い出し、また腐海の秘密を持っているセルムに、ナウシカもまた大きく心を揺さぶられます。
な、なんかもうぜんぜんアスベルのこと思い出してないし……すれ違いすらしてないし……。いやいや、まさか宮崎駿作品に限って、ヒロインの王子役が途中で変わるなんて、そんなNANA的なことあるはずない! そうよね、王蟲!?

●ナウシカとアスベル、再会(チョットだけ)

アスベル「ナウシカ」
ナウシカ「アスベル」
アスベル「遅れてすまない!! マニ族を説得するのに手間どった!」
―――6巻147ページ

ほんまに遅すぎるわー!! その間にナウシカがどんな軽薄なナンパにあっとったか、知っとんのかー!
……かくして、長い長い別れの時は終わり、ふたりは再会を喜び合い、アスベルは秘石をナウシカに渡し……え? もう再会終了!? またふたりは離れ離れなの!?

なんと、わずか1ページで、再び運命に引き裂かれてしまうナウシカとアスベル。ちょ、おま、せめてハグとか、チューとかぐらいさ〜っっ。

●そういうことは本人にいえよ、アスベル!

アスベル(まっててくれ ぼくの愛する風使い)
―――7巻57ページ

…………。しかし、その心の叫びも、お姫様の耳には届かず……。
その間に、ナウシカは巨神兵オーマの母親になってて……って、いきなり子持ち。あれこれすっ飛ばして、子持ち。ナウシカの腕に巻かれていたアスベルの包帯も、ヒドラに破られ、塵と化しておりました。あ〜、ふたりの絆が〜。

アスベル……女は、そんな悠長に男を待ってられねぇんだよ! 激動の世の中を渡り、いろんな男と出会うんだよ、女はよぉ!

●ナウシカとセルムの逢瀬に、物理的距離は関係ねぇ!

ナウシカ「大丈夫セルム あなたが来てくださったのでいろいろ見えて来ました」
―――7巻129ページ

不死の番犬に心を捉えられようとするナウシカ。ピンチ! そこへ颯爽とあらわれるのが……またセルム! 心の中なら、お手の物! どこでも出現できるんだね、イケメンは! まーた、ナウシカのハートをときめかせちゃってさぁ!

セルム(ナウシカ 行きましょう)
ナウシカ(……ハイ)
セルム(私は何処までもあなたと共にいきます)
ナウシカ(セルム…)
―――7巻174ページ

や、そんな……さっきプロポーズも断ったし、「共に」とはいっても、ねぇ……。

●ケチャを抱きとめるアスベルを見届けて、ナウシカは――

セルム(ナウシカ それはわたしとあなただけの秘密です
 生きましょう すべてをこの星にたくして 共に……)
ナウシカ(はい)
―――7巻223ページ

工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工

……これが、これがナウシカ全7巻の最終ページ!? セルムはナウシカとふたりだけの秘密を共有して、ナウシカはやっと再会したアスベルが土鬼の女と抱き合うのを見て、「ハイ」と……。

ナウシカのヒーローはアスベルじゃなかったー! いつのまにか新ヒーローセルムにすげかわってたー!

……ええ、アタシは子供心に、この結末がショックでショックで。
腐海とか地球とか人類とか、そんなことより、ナウシカとアスベルが結ばれなかったことだけがショックでねぇ。それは落ち込んだものです。今でも信じられませんよ。映画版ではそんなそぶり、微塵も見せなかったのにぃ!

あれですかね。やっぱ10年以上連載されたせいで、ナウシカが想定以上に聖母になってしまったのがいけなかったんでしょうかね。もう人というより、神の領域に達しちゃってて。だから、人間くさいアスベルでは釣り合いがとれなくなった。仙人の如きイケメン、セルムの登場が必要だった。そういういことですかねぇ?
……まるで、遠距離恋愛をしているうちに、女は都会でどんどん出世コース、男は地元の町工場でしがない工員、「住む世界が変わっちゃったね」つって、社長御曹司と婚約しちゃった彼女……て感じ? 男も男で、地元の幼なじみとささやかな恋を育んでて……みたいな。

なんつーか……漫画『風の谷のナウシカ』は恐ろしいほど荘厳で、超SFで、ありがたいメッセージをいくつも授かる作品なんですけど、アタシは男と女の現実をイチバン教えられた……といいますか。はい、アタシが受けれる教訓なんざ、その程度です。

大好きというのも憚られるほど大好きな作品ですけど、ちょっぴり読み返すのが苦い作品です。甘酸っぱい初恋を思い出す、みたいでね。

第27回 グラビアに徹する少女美学『いちご100%』

『きまぐれオレンジ☆ロード』『電影少女』をレビューしたのが遥か昔のことのよう……実際かなり前ですが。はい、久々のジャンプレビューです。個人的ジャンプ3大ラブコメの最後は、『いちご100%』です!

この作品についてはアタシが語るまでもなく、マンガがあればいーのだ。さんがありゃ十分なんですけど。

『いちご100%』は、2002年から2005年までジャンプで連載されていた、河下水希先生の学園ラブコメです。『きまぐれ』が全18巻、『電影少女』が全15巻(あい編13巻)に比べ、『いちご100%』は全19巻。ジャンプ最長のラブコメ漫画でした。この数字からも人気のほどが窺えますね。

ラブコメに欠かせないい要素のひとつにSF要素がありまして、それは「超能力一家」として『きまぐれ』に、「ビデオから出てきた少女」として『電影少女』にも確固として存在していました。フシギ能力で巻き起こるエッチなハプニング、隠して過ごさなければならないドキドキ感。どちらも恋愛描写を何倍にも美味しくする、ステキエッセンスですね☆

これを足さない手はありません。『いちご100%』にも、しっかりSF要素はありました。え、記憶にない? 「パンツが見えまくる」という強制シチュエーションは、まごうことなくSFですよ! ハレンチきまわりないハプニング、隠さなきゃいけない乙女の秘密。パンチラは乙女の最大の武器、能力ですから!


『いちご100%』がジャンプにもたらしたものは、なんでしょう。
主人公・真中淳平に想いを寄せる、東城綾西野つかさ。黒髪ロングvs茶髪ショートという構図も、先の2大ラブコメと同じですね。違うのは、みなさんもご存知の最終回。大ドンデン結末です。

これまで、主人公が最終的に選んだのは鮎川遥、天野あいの第一ヒロインでした。ライバルヒロインも奮闘し、多くの読者を魅了しましたが、やはり第一夫人には勝てなかった……。帰るべきところに男は帰り着くという、避けられない命題ですな。
2度あることは3度ある。今回もその先達にならい、東城綾を選ぶはず……思いきや、まさかのまさか! これには全読者がうなりましたね。『究極!!変態仮面』でも、あったけど!

この結末を読めなかったのは、それまでの『いちご100%』に驚きの展開・特異な個性がなかったからです。
描かれていたのは、どこかで見たシチュエーションの連続ばかり。数々のラブコメ面白エピソード、ギャルゲーのサービスCG。それらを上手く編集し、絶え間なくつなげることで『いちご100%』は成り立っていました。ヒロインがメイド姿になったりサンタ衣装を着たりと、これまで表紙程度でしか描かれなかったコスプレを作品内で拝めたのも、サービスショット重視な作品だったからこそ。

故に「いちごは内容がない」と非難する声も多々ありました。
真中淳平に対する憎悪と殺意も山のように! ヒロインの間を行ったり来たりが、ラブコメ主人公のお約束とはいえ、真中淳平はあまりにも少年漫画誌としての魅力がなさすぎでした。ハプニング・状況によってコロコロ変わる男心。青春恋愛劇というよりは、シチュエーションラブコメディですな。それが、熱烈ないちごファンと一般読者との所感の差を、大きくしていたように思います。

アタシが好きだったのは、河下水希の徹底した少女美学です。たしかに真中は最低最悪だが、可愛い女の子を眺められるなら、どーでもええ。
『いちご100%』を彩る少女達は、みんな可愛く、特にやわらかな肉体ラインには目を奪われるばかりでした。漫画的な、カリカチュアされた美しさではなく、リアルな美。グラビアそのものの眩しさと構図を毎度保っていましたからね。
桂正和も、2次元の女性より現実の女性の美に惚れ、再現せんとリアルな線を研究していました。河下水希の描く少女にも、似たような哲学を感じるのです。

中でも制服姿が見事すぎて……。表紙でも別デザインの制服が描かれたりと、河下先生はかなりの学制服フェチなはず! つかさが別の高校を選んだのは、セーラーとブレザーの両方が描きたかったからだ! と、勝手に思ってたり。


最終回、真中淳平は公園の階段で、西野つかさと再会します。まるで『きまぐれオレンジ☆ロード』の最終回を彷彿する構図……そこにいたのは鮎川でなく、ひかるちゃんだったわけですが。あのシチュエーションは、やはりその返歌でしょうか。物語的には鉄棒の前で再会の方が、うまくハマってたでしょうに。

まぁ、制服や肉体より、パンツパンツパンツが目玉だった『いちご100%』。乳首を奪われたジャンプでは、それを武器にするしかなかったんでしょうねぇ。
正直、もう少しリアルな心理描写も見たかった。どのキャラもイイ子ばかりで、ドラマを盛り上げる、憎まれ役すらいないんですよね。女の嫉妬もほとんどスルー。まぁ、女の描く女の嫉妬なんて、ジャンプ読者が見たいわけないですが。

ただいま連載中の『初恋限定。』は、河下作品の魅力を最大限に活かす設定が施されています。ヘタレな主人公はいない! 可愛い女の子はわんさか! オムニバス形式といい、正直『いちご100%』より好みです。制服も可愛いし、画力もパワーアップしまくり! ……と、思ってたんですけど……。

次に来るジャンプ代表ラブコメは、どんな作品になるのでしょう。『ToLOVEる』が、もうそうなってるのかな? ドロドロに突っ込んだ恋愛劇も見たいけどなー。それはもうジャンプでは無理かもしれませんね。

第26回 少女を育む不思議な生き物と、もうひとりの少女『ミヨリの森』

仕事が片付かず、イッパイイッパイな日々を送っているゆすらですが、8/25(土)21時から放送されるアニメ『ミヨリの森』は、とっても楽しみ!

大好きなマイナー漫画の、まさかのアニメ化。監督は『もののけ姫』『時をかける少女』の美術監督、山本二三
情報を知った先月からワクテカで待っておりましたよ。てなわけで、今回は原作『ミヨリの森』の魅力を、放送に先駆けて紹介しちゃいます。


★少女★

『ミヨリの森』の作者は、「アフタヌーン」でデビューした小田ひで次。寡作ながら『拡散』『クーの世界』という名作を生み出し、コアなファンを作ってきました。

『クーの世界』『ミヨリの森』の主人公は少女
少女は小田ひで次の重要なテーマであり、永遠の命題です。ファンはその少女の描写力と魅力に、心奪われるのです。

いわゆる二次元少女が持つ可愛らしさ、萌えとは真逆を走る、独特オーラ。生々しさと幻想を併せ持ち、神々しき光を、彼の産む少女達は放ってます。触れれば壊れる女神達よ!

作者に宿る現実の少女への親しみと尊敬が、この繊細でリアルな少女像を形成しているのでしょう。愛でるような優しさが、ページからにじみ出ています。


★ミヨリ★


『ミヨリの森』の主人公、真縞ミヨリ
母親が男と失踪したため、ド田舎にある祖母の家にあずけられるハメになった、かわいそうな小学6年生です。幼い頃から両親のケンカばかり見てきたため、他人に心を開かず、近付く人には強固な壁でガードします。

そんな人間不信のミヨリは、生きるために空想癖を身につけます。自分を小説の中の一人物と捉え、出来事をブツブツとナレーションしては、認めたくない現実を虚構に変えていくのです。

私は……
かすがいになれなかった罪で島流しの刑にあうんだね………
見ず知らずの父の実家へ幽閉されるんだ 人身御供になるんだ……
いいんだ…… どうせもう私の人生おしまいなんだ……


(『ミヨリの森』 Story1 捨てられたミヨリ)

勝気で意地っ張りな都会の少女。
祖母の所有する森と出会うことで、彼女の心は次第に変わっていきます。


★小田ひで次の世界★

ミヨリは、森の中で不思議な生き物に出会います。
森の番人ボクリコ、悪い夢を食べるモグリ、川に捨てられたものを勝手に届けてくれる川の住人カノコ……。
ミヨリにしか見えない森の精霊たちも、この漫画の魅力のひとつ。その、気味悪さと可愛さの紙一重といったら!

昔から、小田ひで次の描く世界観は、ジブリと通じるものがありました。
今作では、まず誰もが『となりのトトロ』を思い出すことでしょう。「森と少女」といえば、これを置いて他にありませんからね。
トトロの壮大な森が好きな人は、きっとミヨリの森も気に入るはず。
でも、精霊の生々しさは『千と千尋の神隠し』の方が近いかな。『もののけ姫』もありだな。『かみちゅ!』ほど人為的でなく、考古学の本に載っててもおかしくない、説得力のあるキャラクター造詣なのです。

ジブリっぽいのは、世界観だけではありません。少女の持つエロスもまた、相通ずるところ。
しかも、こちらはセル絵でなく、肉感的な漫画絵です。内包するエロ度も、倍のバイ。とくに鼻と唇の艶かしさはたまらんものが!

物語がストイックに準ずるほど、余計にエロティックを感じてしまうのは、何故なのでしょう。


★少女の初恋★

趣味なのか憧れなのか、「少女と、たよりない兄(的存在の男性)の恋」も、小田ひで次作品の要となっています。前作『クーの世界』でも、重要なテーマでした。

今作では、続編にあたる『ミヨリの森の四季』で、ミヨリの淡い恋心が描かれています。

勝気なはずなミヨリの、初恋に対する戸惑いと照れがっっ! ちょっとツンデレ入ってるし!

しかし、恋しさ故に「嫉妬」を覚えてしまったミヨリは、まるで自分が自分を捨てた母親のようだと、悩み苦しみます。

――……人はね なりたくない人間になりがちなのよ!
あんたには私の血が流れてるんだからね!――

「いやだ! いやだ!!
 そんな言葉がほしかったんじゃない……!」


(『ミヨリの森の四季』 第3話 精霊が消えた森)

気づくと、いつもそばにいて助けてくれた精霊達の姿も見えなくなっていて……。

ここらへんは、ちょっと『魔女の宅急便』を彷彿としますね。

恋は、無垢な少女時代の終焉。愛しさと憎しみを知って、人は大人の階段を登れるんだよね……!

ミヨリもキキのように恋を経て、女として魔女として成長していきます。


★そして少女は少女と出会う★

しかーし、そんな恋心は重要ではあっても、崇高な少女の最終形態にはなりえません。

小田ひで次が描く「年上の男に憧れる少女」は、一見、作者の願望とも見えますが、そこらにはびこる単純なロリコン根性とは一線を画します。初恋成就でハッピーエンド!など、言語道断。

所詮、大人の女性に向き合えない男など、きまぐれな少女に遊ばれたあげく逃げられる、哀れな存在。
彼女達にとって最も大事な存在は、共に成長しあえる少女に他なりませんから。

今まで見えなかった自分、目を背けていた自分を、鏡のように映し出す、もうひとりの少女。
少女は他者として自分に出会い、弱さと醜さを知って、成熟していくのです。これは、一時の気の迷いのような恋心と違い、憎しみとも友情ともつかぬ、強い絆。永遠の百合感情なのです。


そんな、かけがえのないミヨリと華枝の出会いは、『ミヨリの森の四季』の中盤から。
アニメでは描かれないと思うので、どうぞ手に取って読んでください。そして、ふるえながら手をつなぐ、ふたりのうしろ姿を瞼に焼き付けて……!

なにを言っても今の華枝ちゃんには届きそうにないや……
まるでちょっと前の自分みたいだ………
でも…… 嫌だ! 失いたくない……!!


(『ミヨリの森の四季』 第6話 魔法の言葉)

『電脳コイル』のヤサコとイサコの関係に釘付けの方には、とにかく必見ですから。
前半に出てくるミヨリの初恋相手、朔也など、ただのあて馬にすぎんわ!


――さて、かなりジブリ作品を引き合いに出し紹介してきましたが、けしてこの作品がその模倣に陥ってるのではないことを、最後に付け加えておきます。
読めばわかることですが、小田ひで次の描く少女は、ジブリヒロインとはまったく違います。例えるなら、『カリオストロの城』の峰不二子原作の峰不二子ぐらい、似て異なるものと言いましょうか。目指してる方向は真逆。また、小田ひで次オリジナルの魅力が、物語やキャラクターに溢れているので、ご安心を。

この記事で、少しでも〈ひで次ワールド〉を気になってくださったなら、とりあえず明日のアニメをチェック!
ま、現時点ではアニメの出来などわからないですけどね。ステキな作品に仕上がっていると、信じるばかりです。そして是非、原作へ! 奇妙な精霊達が、あなたのお越しを待ってますから。

“ミヨリは思った……
 そう信じてやるしかないか……!”
“決意をあらたにするミヨリなのでした……”


(『ミヨリの森の四季』 第7話 そして風が気持ちをつなぐ)


+ + 2007/08/26追記 + +

↓10秒でわかる、放送後の巷の反応。
教えて!goo ミヨリの森って平成狸合戦と・・・

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注:すべての予想には多分の妄想・幻覚・勘違いが含まれております。

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