第8回 乙女の夢日記『星の瞳のシルエット』

〈恋愛〉より〈友情〉を重んじることが美学とされるのはどうしてなのでしょうか。

「友情は美しく、恋愛は浅ましい」そんな固定概念で塗り固められたこの世界。
己の恋のために友をないがしろにした人間は、裏切り者、人非人、色情狂と呼ばれ、とくに女子の間での糾弾にはものすごいものがあります。学校なんかでは軽く村八分、孤立を強いられること必至です。
男がらみの揉め事は修復不可能。……女の友情とは、ダイアモンドのように美しく強固な輝きを放ちながら、実際には氷のように冷たく脆い内部構造なのです。そんな諍い、みなさんも身に覚えのあることでしょう。

〈恋愛〉など〈性欲〉のおためごかしであり、それを優先する人間はすなわち「エゲツない性欲やで〜」(by徳井さん)。だからこそ秘められた恋心がドラマを生むのか。
そんな〈恋愛〉と〈友情〉の葛藤を、これでもかと読者に突きつけた漫画が『星の瞳のシルエット』です。



1985年〜1989年に連載された、「りぼん」を語る上で欠かせない少女漫画。
幼い頃にすすき野原で出会った男の子を未だに想い続けている中学生、沢渡香澄。彼女と彼女の親友2人の恋愛が成就するまでを描いた、さわかやマシュマロ学園物語です。
一目惚れした男の子、久住智史くんが、香澄の思い出の少年と同一人物だと知って、さぁ大変☆ 想いはますますつのるのに、彼女は親友の森下真理子のため恋心を隠し、押し殺そうとします。
この犠牲心が途轍もない。

星のかけらを受け取ったディステニーも振り切り、香澄は積極的に久住くんへアタックする真理子を応援し続けます。
ペルセウス座の流星群が降り注ぐ下という最強のシチュエーションで久住くんに告白されても、涙ながらに「ごめんなさい」。自分から振っておきながら、真理子に「あたし…ね 失恋しちゃった」と嘘の供述。さらに「告白してごらんよ」と背中を押して、久住くんと真理子をくっつけちゃいます。
あなたマゾですか? 両想いでありながら幸せを拒み、うざいほど親友の恋に尽力……。マザー・テレサ気取りか? いやいや、貧しい人のために尽力する精神には畏敬の念も耐えませんが、この一方的な自己犠牲は理解不能ですよ。尊敬もできなければ共感も覚えません。イケると思って告った久住くんがあんまりじゃねぇか!

「私の暗躍により、ふたりは偽りの恋に結ばれる……操られていることも知らずに。フフフ」そう、歪んだ優越感に浸るっているとしか思えません。自己満足、自尊心、悲劇のヒロインで塗り固められた犠牲行為。なんとおそろしい主人公でしょうか。

このような行動が美徳とされるのが少女漫画であり、当時の少女達の固定概念を形成していました。
今回、改めてこの作品を読んで驚きましたよ。中学高校の4年間、恋愛と友情についてしか描かれてないんですから。
全10巻が、3人娘の恋愛の道程にのみついやされている。他に何もない。何もしてないんです!

うーん、恋愛以外の一切を削ぎ落とすことで、作品を崇高なものに高めているんでしょうねぇ。宗教的な域にまで。

そんな聖域『星の瞳のシルエット』を、今年の「きなこ餅コミック」少女漫画部門(?)の締めとさせていただきました。
『ときめきトゥナイト』は少女達の非現実的な夢を詰め込んだ作品でしたが、現実的な夢、理想の自己像を描き表したのが、この作品。

個人的にはジブリ映画にもなった『耳をすませば』や、後の連載『銀色のハーモニー』の方が好きでしたが、一般にはこちらが作者の代表作となってます。何より「250万の乙女のバイブル」というコピーはあまりにもキャッチーすぎました。
現役の乙女も元乙女も、機会があればこのバイブルを手に取ってみてください。あまりのストイックさに思わず入信してしまうかもしれません。男性は……共感できる人がいたら驚きです。

いやはや、今の少女にとってのバイブルって何なんでしょうね。というか、そもそも「りぼん」が読まれているのかどうかが甚だ気になります。現在の発行部数が自分の読んでいた時期の6分の1なんて聞くと、熱心な元読者は悲しいよ、とほほ。
やはり、アタシらの時代は「ジャンプ」といい「りぼん」といい、名作に恵まれすぎてたんだなぁ。集英社に育てられて大きくなったようなもんですよ、ほんと。

これからもたくさんの少年少女を育んでくれよ! 子供たちのバイブル、それが「ジャンプ」と「りぼん」じゃないか! 栄光を、愛を取り戻せ!


……とまぁ、こんな感じで来年も漫画を語っていきたいと思ってる、ゆすらでした。
読んでくださってるみなさま、ありがとうございます。正月早々にも更新するぞ! では、よいお年を〜。

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