第13回 まさに外道!!!『地獄甲子園』

あなたが最も笑ったギャグ漫画は何ですか?

我を忘れ、涙が出るほど爆笑した作品のことを、人は死ぬまで忘れません。願わくば棺桶まで持っていきたい……天国でグワシ!!

ギャグは流行りすたりが激しく、月日が経つと笑えなかったりするもんですが、誰にでも必ずひとつは「いつでも笑える」という鉄板作品があるものです。

ということで、今回から3回に渡り、アタシの人生に多大な影響を及ぼしたゆすら的3大ギャグ漫画について語っちゃおーと思います。またチョッチ古い漫画になる予感大。
しばしの間、アタシのギャグマンガ日和にお付き合いくださいませませ。

第1作目はドドーン、『地獄甲子園』



我らが漫☆画太郎先生の、熱闘甲子園ド根性ホームラン漫画……っぽい、破壊漫画です(もう☆の中にFとか$とか\とか、どうでもええわ)。
数々の迷作を生み続けている作者ですが、アタシはこの『地獄甲子園』が一番好き。ジャンプコミックス全3巻というコンパクトさの中に、画太郎の魅力があらんかぎり詰まっていると思います。
画太郎を知りたいなら、まずは『地獄甲子園』へ。アタシの中のマニュアルです。

今回はそんな破天荒な画太郎のテクニックと名場面の数々を、『地獄甲子園』のストーリー順に挙げてみようではありませんか。
覚悟はよろしいですか? では、《地獄野球の延長13回裏》まで、プレイボール!


1回裏 コピー(全巻)

コピーは画太郎漫画に欠かせない定番技です。
もう、原稿料の支払いはどうなっているのかと気になるほどの乱発っぷり。つぎはぎだらけのページは、さながらボロ雑巾でできたパッチワークです。

『地獄』では、はじめの強敵番長が、主人公である十兵衛に向かってボールを連投するシーンが最も強烈です。まったく同じページが4ページも続きます。こんなのを許せるのが集英社のふところの深さなのか。個人的には30ページくらい続いて欲しかったですけどね。

アタシは昔からリピートネタに弱いんですよ。
レコードの針飛びがまず大好物で、ブツブツ途切れながら繰り返し流れるフレーズを何時間でも聴きこんじゃう。マリオでいうなら無限ループ。劇団でいうなら少年王者舘。ユーミンでいうなら「リフレインが叫んでる」。あー、α波出ますわ。


2回裏 パクリ(全巻)

これまた画太郎を語る上では避けられないネタ。
『地獄』はそれほど目立ってありませんが、『珍遊記』でのパクリは、あまりの豪快さに面食らいましたよ。
フリーザ人気はあれで拍車が掛かったと思っています。


3回裏 死(全巻)

まー、よく人が死にます。どれもこれも悲惨な死に方で。
頻繁に見るのが、死に際の者を抱きかかえ、ガクリと事切れた瞬間に名を叫び号泣するコマ。古来からドラマなどで見かける感動シーンのパロディですね。
これが単純ながらオモロイ。いつ見ても笑っちゃう鉄板ネタです。


4回裏 犬とオヤジの名前決定!!!(2巻)

読者から募集した名前を作中で発表するという参加型企画。
見事「中村泰造」「パンチ」と命名した2名の少年には、プレイステーションとソフトの「パラッパラッパー」が送られる豪華特典付きでした。作品に似つかわしくないハッピーなイベントです。
14歳の少年が応募した名前が、なぜ画太郎の初代担当名なのかは永遠の謎ですが……。


5回裏 泰造パンチ見参!!!!(2巻)

犬とオヤジ、まさかの合体
ここらへんのデタラメさは神懸ってます。


6回裏 まさに外道!!!(2巻)

いまだにNet上で広く使われているセリフですね。
このオチのために「名前募集」、「泰造パンチ」があったのかと考えると、見事な構成力としか言いようがありません。この回のカタルシスは驚異です。


7回裏 あなたはこんな顔で死ねますか?(2巻)

って訊かれても……。


8回裏 第2部はなかったことにして下さい!!の巻(3巻)

その前のタイトル「突然ですが試合前にさかのぼります!!の巻」の時点でもヤバイと思ってましたが、ついにやっちゃいました
こんなちゃぶ台返しを堂々としてみせるのが作者の恐ろしいところ。且つ、男らしいところ

実際、内心「あの描写はなかったことにしたい」と連載中に思っている漫画家はけっこういそうなものです。画太郎の偉業を羨望の目で見る者も多いのではないでしょうか。

コピーといいパクリといい、漫画家の内なる願望を叶えているのが、誰あろう画太郎なのかもしれません。


9回裏 落書き(3巻)

『地獄』の4部は全ページに渡り、下書き同然の描き殴りでつづられています。どんな切羽詰った状況で原稿を上げたのか知りませんが、この頃からジャンプは下書きが好きだったのかもしれないですね。

しかし、そこは画太郎先生。
巨匠のオーラを恐れてか、これに対する苦情はとんと聞きませんでした。さすが、名前にFの字を光らせるだけあります。ていうか、普段描いてるものがあんなんですからね

よく「ヒドイ絵の漫画家」という項目で名を挙げられる作者ですが、実際は滅茶苦茶うまいですよね?
陰影の書き込みは緻密で熱いし、激しい感情の表現は完璧。何より、漫画としてコマの構図、キャラクター造形が的確です。その名の通りの実力保持者だと思ってますよ。


10回裏 おっかけコギャル物語(3巻)

そんな下書きの4部は、野球部を応援する女子高生達を中心としたお話になっています。
このコギャルの再現度がハンパねぇCOWCOWの多田さんレベルです(つまり最高級)。微塵の隙もないセリフ、痛快なテンポ。躍動感あふるる若い生命!
もう、本編を陵駕するくらい大好きなサイドストーリーですよ。

「泣いて馬謖を斬る!?」

そんな故事成語、はじめて知ったわ。


11回裏 なにがなんになるんだ!!!?
     なんになるってなんだ!!?
     なにがなるんだ!!!?
     なるってなんだ!!?
     なるって… なにが…
     なにがって…
     …………
     …………
     …………


     (3巻)



「おちた――――っ!!!!」


12回裏 まさかの夢オチ(3巻)

物語は最高に盛り上がり、これ以上はないクライマックスに登りつめたところで、無残にも打ち切られてしまいました。ラーメン作ったり、オヤジを命名したり、コギャル取り入れたりと、試行錯誤を繰り返したのに……。
そして取ってつけたように、夢オチ

ようやく甲子園球場に現れた十兵衛の活躍(主役なのに2巻分まるまる出てこんかった!)、集まった野球戦士8人の正体(はじめは7人しかみつからなかったのが、最後のコマで何気に8人そろっていたのはうれしかった。その分、よけいに悲しかった)、外道高校との試合の行く末……それらがわからないまま終わってしまったのは残念でなりませんが、作者の連載はそんな最終回が多いので、正直「またかよ」。しゃーないわ。


13回裏 あなたはこんな顔で死ねますか?(3巻)

だから、んなこと訊かれても……。


――いかがでしたでしょう。こんな、ゲロとウンコとバイオレンスの『地獄甲子園』。その魅力が十二分に伝わりましたでしょうか。
……え、何が何やらわからない?
しょうがないですね、では作者の初連載作品『珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-』にも言及しちゃいましょう。

この漫画はアタシが小学校高学年のときに「週刊少年ジャンプ」にてスタートされました。
当初はふつうに「きたない漫画がはじまったな」ぐらいにしか思ってませんでしたが、太郎がフリーザ様のセリフを丸パクした頃から「ただの下品じゃねぇのか?」と真の姿に気づきだし、じわじわとその魔力に侵されだしていったのです。
一向に進まない本筋、激昂する脱線、行き当たりばったりのグロテスクな展開は多くの子供から激しく拒絶されましたが、一部の子供から絶大な支持を得ていたのも事実。

しかし、回を重ねるにつれ、作品をおおう邪気は膨れ上がり……



狂ってる。いや正味の話、この頃の作者はチト狂ってました。
こんなイっちゃった目の老婆が、理不尽なことを絶叫しながら子供を殴打しまくる。そんな話が、みんなのバイブル「ジャンプ」に何週も掲載されてたんですよ。
集英社は人の情操教育をなんだと思ってるんだ? 人格を形成する上で重要な児童期に、このような地獄絵図を毎週読まされて……まったく、ジャンプ様には感謝してもしきれない思いですよ、ええ。


電気グルーヴの特別出演など、様々な伝説を打ち立てた『珍遊記』でしたが、1年余りの奮闘の末、打ち切り
次にはじまったのが『まんゆうき〜ばばあとあわれなげぼくたち〜』でした。「ちん」とくれば「まん」。無邪気なネーミングセンスですね。

また同じような話かとタカをくくっていたら、そこには画太郎漫画にあるはずのないものが描かれていました。



主人公、娘々(にゃんにゃん)。可愛さが異常すぎる。

これまでとのギャップに読者は仰天、全国に激震が走り「路線変更!?」「アシスタントが描いてるのか?」と様々な憶測が飛び交いました。が、内容はいつもどおりでした

どうやらこのキャラは作者が10年前に作ったもので、かつて持っていた純粋な創作精神のあらわれ、本来描くはずだった正当・伝奇物語の残滓だったようです。
そもそも、画太郎のデビューは「ジブリの採用試験に落ちた腹いせに描いて送ったら『GAGキング』受賞しちゃった」というハプニング的なもので、言われてみればたしかに娘々を筆頭、いくつかのキャラにジブリの影響を感じとることができます。あまりにも汚れすぎてて、錯覚かと見まがいますけど。

ジブリに憧れていた青年が試験に落とされただけで、このような怪作が世に産み落とされるのですから、宮崎駿のカリスマ性は計り知れないですね。画太郎の存在もまた、ジブリの功績のひとつ。

しかし、作者に残された最後の良心、娘々の物語も短命に終わります。やがて舞台は「月刊少年ジャンプ」に移され、禍々しい『地獄甲子園』の産声があがるのでした――


……と、気づいたら画太郎3部作についてとっぷり語ってしまいましたね。画太郎パワー、おそるべしです。

その後も、『ブスの瞳に恋してる』『珍入社員金太郎』と、数々の迷作を書き続けてきた作者。ギャグ漫画家は短命という定説をくつがえし、狂った精神を維持したまま第一線で戦い続けているのは、まさに奇跡ですね。
10年以上もくそまんを届けてくれて、ありがとう……。今後も、先生の偉業から目が離せませんよ。


では、最後は「師匠の萬々に番犬させられてる弟子の娘々♥」の図でカワイク締めましょうか。画太郎は萌えっ子も 鉄 板 だ !



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