『サナギさん』の暗部に君臨していた生理的嫌悪感

2004年から週刊少年チャンピオンで連載されていた、施川ユウキ先生の4コマ漫画『サナギさん』が、この秋に完結しました。全6巻で秋田書店から絶賛発売中!
中学生を中心に繰り広げられる、ほのぼのシュールコメディでしたが、本作の魅力はなんといっても卓越な言葉遊び。そして、サナギさんとフユちゃんの友情劇です。

へたすれば難解な哲学に行きかねない日常の疑問や韻を、ほんわかラブリーにデコレイションしてるのは、ふたりの存在があればこそ。

「『無人島に何かひとつだけ持っていくとしたら』
 って質問よくあるけど フユちゃんだったら何?」
「やっぱり行きたくないなー…」
「ダメ! 何があろうと絶対行かないといけないの!」
「じゃあ…
 サナギさんとの思い出
「やっぱ行っちゃダメ!」
「どっち!?」

―――『サナギさん』6巻 N0.215 サナギさんと無人島。

なんという、ラブ落ち!
暴力だったりネガティブだったり残虐だったりする中学生キャラが多いなか、サナギさんのまっすぐな天然ラブっぷりは、一服の清涼剤です。シュールでポーカーフェイスなフユちゃんの照れ顔にもニヤニヤしまくりんぐです。

……しかし、そんな『サナギさん』にも、どうしても受けつけられないネタがありまして。

孝くんがサダハル君を殴るのはいいんです。あれはドツキ漫才ですから。虫を踏むマナミさんもいいんです。幼児期って無意味に残虐なものだから。

でもね、たまに出てくる蓮コラネタは、マジ勘弁。

蓮コラ はすこら

蓮の画像と他の画像(人体など)を用いたコラージュ画像。
生理的嫌悪感をもよおすため、精神的ブラクラとして掲示板荒らしに用いられることが多い。

Net上でたまーに遭遇してしまう、ブツブツイボイボのあれ。ああ、想像しながら文字打つだけでもサブイボ総立ちだ!
何故、人は蓮コラが気持ち悪いのか。まだ原因はわかっていないようです。

『集合体恐怖症』というのは正式な医学用語ではありません。精神医学の世界では高所恐怖症などと同じ『特異的恐怖症』に分類されるものですね。もっとも、小さいブツブツが気持ち悪いという理由で病院に駆け込む人はいないので、詳しくはわかっていません」(中村副院長)

「ただ、これは推測ですが、小さいブツブツは蜂の巣や昆虫の群れ、天然痘などの皮膚病を連想させます。そうした人体の危機的状況に対する警戒心が、嫌悪感を呼び起こすのではないでしょうか」(同)

「気持ち悪さ」のメカニズムとは?(R25)

で、『サナギさん』はけっこう、この蓮コラっぽい物体をネタにするんですよね。
たとえば6巻だと――

No.206 サナギさんと新緑の季節。
「木漏れ日のところ天」

No.206 サナギさんと二刀流。
「すべての腕に松葉杖を持って逃げる千手観音」

No.213 サナギさん髪。
「メドゥーサを丸坊主にしたときにできる無数の蛇断面」

が、該当します。蓮コラというか連ドラというか。
何気なく読んでて蓮ネタにあたると、マジで「うっ!」ってなる。漫画ですから、生理的嫌悪を催す絵がくっきり描かれてるわけですよ。ああ、直視できない。でも気になる! でも見てはいけない! なるべく早く次の4コマへ進もうと努めるわけで。

いや、ネタとしては正しいんですよ。
『サナギさん』は日常系哲学漫画ですから。原因のわからない生理的嫌悪を頻繁にネタにするのは当然です。その理屈がわかるからこそ、素直に気持ち悪い。

アタシにとって『サナギさん』は、ほほえましい女子中学生観察日記であると同時に、得体の知れない生理的嫌悪との付き合いでもあったのです。


最終話で、永遠に終わらない連続性のドラマに「終わり」らしきものが描かれたことは、一抹の寂しさを感じるものの、救いですらあった……かもしれません。

作者も嫌いだったんだろうな、蓮コラ。蓮ネタのときはキャラも「うわぁ……」って顔をしてるんですよ。もちろん、読んでるこっちも「うわぁ……」。施川ユウキ漫画は、絵より文章の持つ力が大きいのですが、説明不可能な蓮ネタは「うわぁ……」としか描きようがない。得体の知れない生理的嫌悪が、作者自身も謎で、よくネタにしていたのだと思うのです。描くことでしか追求できない、不気味さよ。

答えのない嫌悪に「なんで気持ち悪いんだろう?」と疑問を持ちつづけることは、とても子供らしい、中学生らしい素直な感覚でもあったと思います。

不思議ちゃんと天然さんの相性の良さったら『サナギさん』
サナギさんありがとう企画〜バスよりもメロスよりも早いよ〜(たまごまごごはん)

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コメント

この記事へのコメント

蓮コラ嫌ですね。当時ですが、おヌード+例の蓮で、FLASHで蓮が動くというのがありまして、速攻ブラウザ閉じましたよ。
それ以降かな?不忍池で、時期によっては目を背けるようになったのは。
小難しい理由での嫌悪感よりも、作家の筆運びやコマ割によって好きな作家でも乗れてないなと感じる時は読むのも辛い時があるんですが、そんな事ありません?

ホント、施川先生の絵が下手でよかったですねー。
もう少しだけうまかったら、それこそ“シャレにならない”状況だったと思います。
たまにある“怖いネタ”では、『不安の種』より不安になることがしょっちゅうでしたから。

ギャグ漫画って、生理的嫌悪感をいかに笑いへ変換するか、みたいなところがありますから。
昔、僕は漫☆画太郎先生の漫画が普通にホラーで、受け付けませんでしたね。
逆に、特定の芸人アンチに「どうしてあんなにも必死に叩くんだろう」と思っていたのですが、笑えない芸って生理的嫌悪感を抱かせるのかもしれません。

パッと見、これを思い出しました。
http://rui4oyo.img.jugem.jp/20070210_290857.jpg

ありがとうございます!今までずっと「蓮コラ」を「れんこら」って読んでたわ…

> 林檎さん

> 当時ですが、おヌード+例の蓮で、FLASHで蓮が動くというのがありまして

そんなん見たら1週間は、よー喋られへんわ……。
この記事書いただけでも、気持ち悪くて仕方なかったのに。

> 作家の筆運びやコマ割によって好きな作家でも乗れてないなと感じる時

ありますねぇ。ああ、迷走してるんだなぁ、これ本当は描きたくないんだろうなぁ、と感じてしまう場面。
あれは生理的嫌悪というよりは、なんか長袖の上にセーターなどを着たとき、袖をしっかり持ってなかったせいで肘のあたりがごわごわになって気持ち悪いときの身体的嫌悪に似てるというか……。
居心地の悪さを感じますねぇ。

> zumage1さん

施川先生の絵は淡白なんで、まだ救われるんですけど、たしかに美麗な絵の人が本気で描こうとしたらエゲツないことなってるでしょうね。
描いてる最中の本人が一番気持ち悪がると思いますがっ。

たしかにギャグ漫画とホラーは紙一重ですよね。
「主観視は悲劇を生み、客観視は喜劇を生む」とも言いますし、それ以前に漫☆画太郎の漫画は絵のインパクトが凄いですしね。人の顔で笑わせようと思ったら、狂気に走らざるを得ないという。
『天才バカボン』の、突然劇画調のガーン顔と同じですよね。

> パッと見、これを思い出しました。

それだーーー!!!
いやほんと、今回の絵は丸尾末広調にしようと頑張ったんですが……残念ながら圧倒的画力不足で似ても似つかぬものになり、如何ともしがたかったわけですよ。
一瞬でも思い出してくださって、ありがたい。というかすみません。

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