第14回 あーみんの固有結界『お父さんは心配症』
今回のお題は、ゆすら的3大ギャグ漫画の2作目です。
前回は漫☆画太郎について思いの丈を存分に語らせていただきました。
アタシにとって、〈少年誌のギャグ作家〉といえば漫☆画太郎をおいて他にいないのですが、あまねくすべての読者にも同様である、なんて乱暴なことは思ってません。
人によっては赤塚不二夫だったり谷岡ヤスジだったり鴨川つばめだったり。年代により代表されるギャグ作家は違いますし、笑いの好みも多様化の一路を辿っています。
少年誌という肥沃な土壌で生み出された傑作ギャグ漫画の、なんと多いことか。現在も多毛作でドコドコ出荷されていますね。お好みの品種改良で。
しかし、少女誌は違います。
「りぼん」、「なかよし」、「ちゃお」等々、夢見る少女を育んできた漫画誌は、古くからたくさん存在しますが、傑作ギャグ漫画を生み出した雑誌は「りぼん」だけ! 岡田あーみんという伝説のギャグ伝道師、ただひとりしか存在しないのですっっ。
彼女の出現以前に、あそこまで少女達の心を掴んだギャグ漫画家は存在しませんでしたし、それ以後も現れませんでした。そして、これからも……。
まさに空前にして絶後、未曾有の威力とカリスマ性。その人気は少女層に留まらず、クラスの男子達、果ては両親(とくに、働くお父さん)のハートまで射止めてしまう有様。
これから先、あーみん程の才能を持った少女ギャグ作家は永久未来あらわれねぇ(byトータルテンボス)。そう断言してもよいのではないでしょうか。
それぐらい、あーみんの出現は衝撃であり奇跡でした。まさしく少女漫画誌に咲くドクダミの花。リアルタイムで読めた僥倖には感謝するばかりですよ。
てなわけで、今回はまったりとあーみん談義でございます。みんなで彼女の偉業を讃えようではありませんか。ズタ袋に夢をいっぱいつめこんで!?
あーみんがその御姿を民に顕現されたのは、1983年5月号の「りぼん」でした。17歳の衝撃デビューを飾った作品が、あの『お父さんは心配症』。宇多田ヒカルバリの神童ですね。

ほどなく連載がスタート。
愛する娘の典子と、ボーイフレンド北野くんとの仲を心配する父、佐々木光太郎がくりひろげるドタバタコメディ。その心配症は回を重ねるにつれヒートアップし、様々な変態を晒した挙句、少女達に狂気すら教えてくれました。
画太郎のときにも語りましたが、〈ギャグ漫画〉と〈狂気〉は離して語れない蜜な関係。少なすぎると面白さが半減してしまいますが、やりすぎちゃうと作家が狂気にのまれてしまう。甘くて危険な媚薬です。
画太郎と同じく、あーみんもこのサジ加減が絶妙でした。ページが進むにつれ、ほどよい配分で足されていき、読めば読むほど味が染みるジューシーな作品を作ることに成功していました。
一言に狂気と言っても、画太郎のそれは主に〈怒り〉。とにかくキャラが吠え、殴り、暴れ、残虐の限りを尽くしていました。
対して、あーみんの狂気は〈笑い〉。イっちゃった人間の「あはははは」という乾いた笑い声がそこかしこで鳴り響いているのが特徴的です。『ひぐらしのなく頃に』の竜宮レナをひもとかずとも、狂気は笑いと同席であることが判然。怒りを超越した人間の喜劇が、まざまざと写しだされていました。
(狂気が笑い変わる様は、チュートリアルのサイケデリックなネタでも使われてますね)
また、クレイジーのレパートリーも豊富で、光太郎のようなスタンダード行動派の狂気があれば、北野くんのように感化されて狂気に転がるキャラもいる(普段は純粋な青年の北野くんが発狂しちゃう場面はとくに好きでした。その変化の呈、一線を越える瞬間がウマイ!)。他にも、愛らしい暴走で人を惑わす天然キャラの安井さん(光太郎のお見合い相手)、狂気が常設しているクールな執事福永さん、素朴なドジで周囲を破滅へと追い込む運転手さんと、バラエティ。
これは、若い作者の尋常ならざる人間観察力のたまものだといえるでしょう。
コミックスのおまけページでは、よく作者の近況や過去のエピソードがつづられているのですが、そのどれもがチト変態。身の周りの歪みを的確に捉え、ネタにする能力を神から授かっていたのですねぇ。
(また、漫画には作者はおろか、当時の担当や「りぼん」編集長の山田英樹氏が度々登場するのが楽しかった。そういえば画太郎も担当の名前をよくネタにしてましたが、内輪ネタといえば、まず思い出すのは『Dr.スランプ』のDr.マシリト。あの時代は、作者と編集が一丸となって作品を作っている姿勢が見えてよかったなぁ。最近はそういうのあるんでしょうかねぇ)
たたみかけるアヴァンギャルド。めくるめくアブノーマル。読者を飽きさせないキャラクターはいつだって輝いていましたよ。みんなみんな、大好きさ……(BGM ジムノペディNo.1)
そんな『お父さんは心配症』は、ボルテージ最高のまま大団円で最終回を迎えます。
次にはじまったのが、戦国時代を舞台にした『こいつら100%伝説』。時は変われど、やってることはド変態。主人公格である忍者の極丸の、ポーカーフェイスでボケを連発する様は、当時ブームだった2丁目劇場なニオイを感じたもんです(というかダウンタウン的でしたね)。
連載3作目の『ルナティック雑技団』では、絵柄が一変して正統派少女漫画!
内容も、学園の貴公子である天湖森夜くんの家に、かねてからあこがれていた同級生の少女星野夢実が居候するという、ドキドキ同居ラブコメディでした。「あのあーみんが少女漫画を!?」とりぼんっ子は騒然。が、変態はいつもどおりでした。

この作品がまた、よい塩梅でクルッテル(関係ないけど、『お父さん』のおまけページ漫画、『ハートカクテル』のパロディ『ハートガクルッテル』はナイスネーミングDA・YO・NE)。
『お父さん』ではまともなキャラが典子だけという見事にキチガイワールド爆発でしたが、『ルナティック』では半数のキャラが正常。それだけに、マダムゆり子や愛咲ルイや黒川の変態性がトビ抜けていました。
こうして、あーみんは約14年に渡り、怒涛の3部作でりぼんっ子を楽しませてくれたのでした。しかし『ルナティック』終了後、彼女はその姿をパタリと世から消してしまいます……。
断筆の理由については、様々な憶測がネット上に飛び交っていますが、どれもネガティブな話ばかり。未だはっきりしたことがわからず、ファンとしては不安を隠せません。
「再びペンを取ってほしい」とまでは言いませんが、どうか、あなたの漫画に狂わされた人々の想いだけは受け止めてほしい。みんなみんな、あーみんのことを好きなんだぜ……?
ファンサイトで面白いのは、なかじーさんの「実践の記録」です。体を張ってあーみん漫画を再現するという、一風変わったファン活動が展開されています。mixiの「岡田あーみんコミュニティ」で盛り上がっている1コーナーなのです。
どれも名場面ばかりな上に再現率が高く、ありありと当時の記憶を彷彿させる! なので、あーみん作品の名シーンについては、そちらをご参考に。
新たなあーみん漫画を読めなくなって、かれこれもう10年ですが、このようにファンの熱は冷めやらぬばかり。いえ、月日が経つほど禁断症状は高まり、恋しくなる始末なのです。
そこのあなたも近頃の漫画ばかり読んでないで、今宵は古い「りぼん」を引っ張り出してみませんか? そしてあーみんワールドに酔いしれようじゃありませんか。白い壁に「堕天使」って書いて!?
前回は漫☆画太郎について思いの丈を存分に語らせていただきました。
アタシにとって、〈少年誌のギャグ作家〉といえば漫☆画太郎をおいて他にいないのですが、あまねくすべての読者にも同様である、なんて乱暴なことは思ってません。
人によっては赤塚不二夫だったり谷岡ヤスジだったり鴨川つばめだったり。年代により代表されるギャグ作家は違いますし、笑いの好みも多様化の一路を辿っています。
少年誌という肥沃な土壌で生み出された傑作ギャグ漫画の、なんと多いことか。現在も多毛作でドコドコ出荷されていますね。お好みの品種改良で。
しかし、少女誌は違います。
「りぼん」、「なかよし」、「ちゃお」等々、夢見る少女を育んできた漫画誌は、古くからたくさん存在しますが、傑作ギャグ漫画を生み出した雑誌は「りぼん」だけ! 岡田あーみんという伝説のギャグ伝道師、ただひとりしか存在しないのですっっ。
彼女の出現以前に、あそこまで少女達の心を掴んだギャグ漫画家は存在しませんでしたし、それ以後も現れませんでした。そして、これからも……。
まさに空前にして絶後、未曾有の威力とカリスマ性。その人気は少女層に留まらず、クラスの男子達、果ては両親(とくに、働くお父さん)のハートまで射止めてしまう有様。
これから先、あーみん程の才能を持った少女ギャグ作家は永久未来あらわれねぇ(byトータルテンボス)。そう断言してもよいのではないでしょうか。
それぐらい、あーみんの出現は衝撃であり奇跡でした。まさしく少女漫画誌に咲くドクダミの花。リアルタイムで読めた僥倖には感謝するばかりですよ。
てなわけで、今回はまったりとあーみん談義でございます。みんなで彼女の偉業を讃えようではありませんか。ズタ袋に夢をいっぱいつめこんで!?
あーみんがその御姿を民に顕現されたのは、1983年5月号の「りぼん」でした。17歳の衝撃デビューを飾った作品が、あの『お父さんは心配症』。宇多田ヒカルバリの神童ですね。

ほどなく連載がスタート。
愛する娘の典子と、ボーイフレンド北野くんとの仲を心配する父、佐々木光太郎がくりひろげるドタバタコメディ。その心配症は回を重ねるにつれヒートアップし、様々な変態を晒した挙句、少女達に狂気すら教えてくれました。
画太郎のときにも語りましたが、〈ギャグ漫画〉と〈狂気〉は離して語れない蜜な関係。少なすぎると面白さが半減してしまいますが、やりすぎちゃうと作家が狂気にのまれてしまう。甘くて危険な媚薬です。
画太郎と同じく、あーみんもこのサジ加減が絶妙でした。ページが進むにつれ、ほどよい配分で足されていき、読めば読むほど味が染みるジューシーな作品を作ることに成功していました。
一言に狂気と言っても、画太郎のそれは主に〈怒り〉。とにかくキャラが吠え、殴り、暴れ、残虐の限りを尽くしていました。
対して、あーみんの狂気は〈笑い〉。イっちゃった人間の「あはははは」という乾いた笑い声がそこかしこで鳴り響いているのが特徴的です。『ひぐらしのなく頃に』の竜宮レナをひもとかずとも、狂気は笑いと同席であることが判然。怒りを超越した人間の喜劇が、まざまざと写しだされていました。
(狂気が笑い変わる様は、チュートリアルのサイケデリックなネタでも使われてますね)
また、クレイジーのレパートリーも豊富で、光太郎のようなスタンダード行動派の狂気があれば、北野くんのように感化されて狂気に転がるキャラもいる(普段は純粋な青年の北野くんが発狂しちゃう場面はとくに好きでした。その変化の呈、一線を越える瞬間がウマイ!)。他にも、愛らしい暴走で人を惑わす天然キャラの安井さん(光太郎のお見合い相手)、狂気が常設しているクールな執事福永さん、素朴なドジで周囲を破滅へと追い込む運転手さんと、バラエティ。
これは、若い作者の尋常ならざる人間観察力のたまものだといえるでしょう。
コミックスのおまけページでは、よく作者の近況や過去のエピソードがつづられているのですが、そのどれもがチト変態。身の周りの歪みを的確に捉え、ネタにする能力を神から授かっていたのですねぇ。
(また、漫画には作者はおろか、当時の担当や「りぼん」編集長の山田英樹氏が度々登場するのが楽しかった。そういえば画太郎も担当の名前をよくネタにしてましたが、内輪ネタといえば、まず思い出すのは『Dr.スランプ』のDr.マシリト。あの時代は、作者と編集が一丸となって作品を作っている姿勢が見えてよかったなぁ。最近はそういうのあるんでしょうかねぇ)
たたみかけるアヴァンギャルド。めくるめくアブノーマル。読者を飽きさせないキャラクターはいつだって輝いていましたよ。みんなみんな、大好きさ……(BGM ジムノペディNo.1)
そんな『お父さんは心配症』は、ボルテージ最高のまま大団円で最終回を迎えます。
次にはじまったのが、戦国時代を舞台にした『こいつら100%伝説』。時は変われど、やってることはド変態。主人公格である忍者の極丸の、ポーカーフェイスでボケを連発する様は、当時ブームだった2丁目劇場なニオイを感じたもんです(というかダウンタウン的でしたね)。
連載3作目の『ルナティック雑技団』では、絵柄が一変して正統派少女漫画!
内容も、学園の貴公子である天湖森夜くんの家に、かねてからあこがれていた同級生の少女星野夢実が居候するという、ドキドキ同居ラブコメディでした。「あのあーみんが少女漫画を!?」とりぼんっ子は騒然。が、変態はいつもどおりでした。

この作品がまた、よい塩梅でクルッテル(関係ないけど、『お父さん』のおまけページ漫画、『ハートカクテル』のパロディ『ハートガクルッテル』はナイスネーミングDA・YO・NE)。
『お父さん』ではまともなキャラが典子だけという見事にキチガイワールド爆発でしたが、『ルナティック』では半数のキャラが正常。それだけに、マダムゆり子や愛咲ルイや黒川の変態性がトビ抜けていました。
こうして、あーみんは約14年に渡り、怒涛の3部作でりぼんっ子を楽しませてくれたのでした。しかし『ルナティック』終了後、彼女はその姿をパタリと世から消してしまいます……。
断筆の理由については、様々な憶測がネット上に飛び交っていますが、どれもネガティブな話ばかり。未だはっきりしたことがわからず、ファンとしては不安を隠せません。
「再びペンを取ってほしい」とまでは言いませんが、どうか、あなたの漫画に狂わされた人々の想いだけは受け止めてほしい。みんなみんな、あーみんのことを好きなんだぜ……?
ファンサイトで面白いのは、なかじーさんの「実践の記録」です。体を張ってあーみん漫画を再現するという、一風変わったファン活動が展開されています。mixiの「岡田あーみんコミュニティ」で盛り上がっている1コーナーなのです。
どれも名場面ばかりな上に再現率が高く、ありありと当時の記憶を彷彿させる! なので、あーみん作品の名シーンについては、そちらをご参考に。
新たなあーみん漫画を読めなくなって、かれこれもう10年ですが、このようにファンの熱は冷めやらぬばかり。いえ、月日が経つほど禁断症状は高まり、恋しくなる始末なのです。
そこのあなたも近頃の漫画ばかり読んでないで、今宵は古い「りぼん」を引っ張り出してみませんか? そしてあーみんワールドに酔いしれようじゃありませんか。白い壁に「堕天使」って書いて!?
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