第15回 ミラクルの雫を集めて『デビューマン』
これまで2回に渡り、少年誌&少女誌のベストギャグ漫画についてダベってきましたが、ラストである今回は青年誌部門です。
青年漫画誌で巻き起こったギャグ革命といえば、『バタアシ金魚』や『行け!稲中卓球部』が記憶に新しいかと。周りはみんな熱狂して読んでましたよ。
暴走、センス、味わい深いキャラクター達。すべてが愛されていました。あの頃の活気を再び望んでいるファンも多いのではないでしょか。青年誌において「ヤングマガジン」の築いた偉業は大きいですね。
「ジャンプ」「りぼん」は買ってても、ヤング誌を買う習慣はなかったアタシ。不覚にも、そこらへんの洗礼をちゃんと受けておりません。ああ、もったいない。
しかし、そんなアタシにも一応、忘れられない青年ギャグ漫画というものがあります。
「ヤングキング」に連載されいた『デビューマン』です。

ヤンマガすら購読してなかったアタシが、ヤンキン。
身近にネットもなかった10年前です。普通に考えて、知り得るチャンスはありゃぁしませんでした。
運命の出会いは12年前。
当時バイトしていた、つぶれかけのラーメン屋。そこに置いてあった油ギトギトの当雑誌が、吉本蜂矢先生とのファーストコンタクトでした。
載っていた読み切り『金髪先生』に一目惚れ。笑いと絵のセンスに脱帽しまくりでした。
当時のヤンキンには、どこの地域で生き残ってんだよとつっこみたくなる時代遅れな不良どもの青春ドラマが主。ドロまみれで不毛と化した校庭の中、『金髪先生』はP&Gの洗剤で洗った白いシャツのように爽やかに輝いていました。
シャープなラインにポップな絵柄。キャラクターも背景もトーン選びも、どれも滅茶苦茶カッコエェ! といってカッコつけしぃでもなく、ナチュラルな雰囲気もまたカッコエェときたもんだ!
ギャグ漫画ではありえなかった絵。汚くもなく、シュールでもない。ひたすら巧みで軟派!
肝心のギャグはというと、これがまた見たことのない新境地。
驚きと抱腹のWコンボで、アタシはすっかり骨抜きにされてしまったのでした。もうメロメロですよ。
そして、ほどなくはじまった連載が『デビューマン』。
トビ、アサヒ、千代彦の男子高生3人が繰り広げる、イカ臭い共同生活物語。餓えに苦しみ、隙あらばオナニー、ケンカ、裸と、バカ極まりない日々のオンパレード。
野郎ばかりではありません。同じ学校の青田とトキワ、お嬢様学校のナナコという女子高生らがまた滅茶カワイク、だけど一癖アリという憎めないキャラ郡。それは、男女6人が織りなす甘酸っぱい青春白書……にはならない気だるさと暴走が見ものの漫画でした。
アタシは野性的なトビが1番のお気に。見た目と裏腹に清純なトキワもイインダヨ〜。

当時、このためだけにヤンキンを読んでましたからね。他のページは開きもしないで。
『金髪先生』と比べると、『デビューマン』はコマの密度と小ネタが5割増し。POPもギャグも格段にパワーアップしています。ネタに合わせて絵柄も七変化し、ハンパない形態模写がまた楽しい。
ギャグ漫画としてもストーリー漫画としても、最高のボルテージを持っていました。
すべてのギャグ漫画は「読者を笑わせる」という性質から、どこかマヌケだったりダサかったりするもんですが、これにはそんな要素が微塵も感じられません。
今読んでも大爆笑! というのはこれまで紹介した『地獄甲子園』『お父さんは心配症』も同じですが、それらとは違う、色あせない〈新しさ〉がこの作品にはあったのです。
当時の高校生の風俗をふんだんに取り入れ、時代を感じさせる部分も多いのに、いつまでも最先端に感じるのは何故?
それは、このパワーの影響を受けたギャグ漫画が少ないからかもしれません。
革命的作品の後は、多くの二番煎じが生まれることはみなさんもご存知の通り。しかし、吉本漫画の舞台はヤンマガではありませんでした。ジャンプでもスピリッツでもありませんでした。そのため、幸か不幸か知る人ぞ知る名作となってしまったのです(ヘタに真似てる作品はいくつかありましたが、ギャグとして以前に漫画として成立してないものばかりでした)。
その姿は孤高の花。オンリーワンなラストワン。時代を作らなかったイコール、古臭さを感じさせない。
……しかし、万人に知られなかった理由は掲載誌がヤンキンだったからだけではありませんでした。あまりにも休載が多かったのも大きな要因。悲しい事実です。
月2回発行のヤングキングでスタートしたにもかかわらず、全18話の掲載にかかった月日は5年。超遅いドモホルンリンクルみたいな製造過程。絞り切るような一滴一滴。
2巻が発売されたのは、1巻発売の7年後というのだから、泣かずにゃぁいられませんよ。
7年て! 小学校もひとまたぎだよ!
でも……信じて待っててよかった……! 7年越しの再会!
嗚呼どうか、単行本に収録されていない作品もまとめて出しとくれ! アタシが生きている間によぉぉ……!
まったく、天才的センスの持ち主はすべからく、天才的気まぐれ屋さんなのでしょか。
いえ、笑いへの飽くなき探究心が、同じものを描き続ける行為を許さず、作家を苦しめてしまっているのでしょう。
岡田あーみんも自ら筆を折り、望月峯太郎も古谷実も早い時期にギャグ業界から去っていきました。
それを思うと、漫☆画太郎のタフさ加減に改めて……
(まぁ、画太郎はうまく〈コピー〉〈ワンパターン〉を芸にすることができたので、ギャグ作家が陥りやすい闇にはまらずにすんだのかもしれませんね。
お笑い芸人も〈お約束〉といういか、パターン化したギャグを持たないと、ネタを生み続けるのは難しいですもんね。)
……そんな、奇跡の雫『デビューマン』。
どうぞ、ミラクル気分を味わいながらお手にとってくださいませ。
リーズナブルでコンパクトな全2巻。未完です。ううっ、その後の6人とか滅茶気になるのにな……丁寧に作られた美味しい設定なのに……。
ちなみに、その前に連載された『うさうさにゃんにゃん』も全1巻で未完。デビューから10年以上経つのに、吉本蜂矢の単行本はたった3冊だけという寡作っぷり。いやー、初心者にも入りやすくてありがたいですねぇ、ハハハハハ。
『デビューマン』後も、オリンピック並みの間隔で作品を発表したりしなかったりな作者。
とにかく傑作ですので、もっと認知されてほしいです。Amazonではイメージすら貼られてねぇし。
(過去に布教したことはあるんですけど、残念ながら友達の反応はイマイチ。あ〜、蜂矢ワールドを語り合える友がほしい。もっと堪能したい。過去の同人誌とかも読んでみたいんだよぉ〜。)
ちなみに、『デビューマン』の1巻はばちかぶりの歌詞がチラリとあるのもミソ。それだけで、センスの如何はミミカキユーザーには言わずもがなですな。
そんなとこも個人的にDestiny感じちゃってたり……万感の思いをのせ、汽車はゆく……。
――というわけで以上、ゆすら的3大ギャグ漫画でございました。
少年誌、少女誌、青年誌から選りすぐりの3作。いかがでしたでしょう。愛、伝わりましたか?
よかったら、みなさんの3大ギャグ漫画も教えてくださいね。マンガレビューなんぞやらせてもらってるゆすらですが、実は漫画好きのリアルな友達ってほとんどいないんです(これまで漫画好きをあまり表に出さなかったんで)。
なので、今更ながら「漫画について大いに語り合いたい欲求」が芽生えちゃってたり。やろうぜ、漫画トーク。くわしくはないんですけどね。
……っと、次の更新が「ミミィ&カッキー」でのラストの更新になる予定です。
このしらゆり荘から引越すのはさみしいですが、ラストまで楽しく語れたらなと思います。
いつも読んでくださるみなさま、ありがとうございます!
青年漫画誌で巻き起こったギャグ革命といえば、『バタアシ金魚』や『行け!稲中卓球部』が記憶に新しいかと。周りはみんな熱狂して読んでましたよ。
暴走、センス、味わい深いキャラクター達。すべてが愛されていました。あの頃の活気を再び望んでいるファンも多いのではないでしょか。青年誌において「ヤングマガジン」の築いた偉業は大きいですね。
「ジャンプ」「りぼん」は買ってても、ヤング誌を買う習慣はなかったアタシ。不覚にも、そこらへんの洗礼をちゃんと受けておりません。ああ、もったいない。
しかし、そんなアタシにも一応、忘れられない青年ギャグ漫画というものがあります。
「ヤングキング」に連載されいた『デビューマン』です。

ヤンマガすら購読してなかったアタシが、ヤンキン。
身近にネットもなかった10年前です。普通に考えて、知り得るチャンスはありゃぁしませんでした。
運命の出会いは12年前。
当時バイトしていた、つぶれかけのラーメン屋。そこに置いてあった油ギトギトの当雑誌が、吉本蜂矢先生とのファーストコンタクトでした。
載っていた読み切り『金髪先生』に一目惚れ。笑いと絵のセンスに脱帽しまくりでした。
当時のヤンキンには、どこの地域で生き残ってんだよとつっこみたくなる時代遅れな不良どもの青春ドラマが主。ドロまみれで不毛と化した校庭の中、『金髪先生』はP&Gの洗剤で洗った白いシャツのように爽やかに輝いていました。
シャープなラインにポップな絵柄。キャラクターも背景もトーン選びも、どれも滅茶苦茶カッコエェ! といってカッコつけしぃでもなく、ナチュラルな雰囲気もまたカッコエェときたもんだ!
ギャグ漫画ではありえなかった絵。汚くもなく、シュールでもない。ひたすら巧みで軟派!
肝心のギャグはというと、これがまた見たことのない新境地。
驚きと抱腹のWコンボで、アタシはすっかり骨抜きにされてしまったのでした。もうメロメロですよ。
そして、ほどなくはじまった連載が『デビューマン』。
トビ、アサヒ、千代彦の男子高生3人が繰り広げる、イカ臭い共同生活物語。餓えに苦しみ、隙あらばオナニー、ケンカ、裸と、バカ極まりない日々のオンパレード。
野郎ばかりではありません。同じ学校の青田とトキワ、お嬢様学校のナナコという女子高生らがまた滅茶カワイク、だけど一癖アリという憎めないキャラ郡。それは、男女6人が織りなす甘酸っぱい青春白書……にはならない気だるさと暴走が見ものの漫画でした。
アタシは野性的なトビが1番のお気に。見た目と裏腹に清純なトキワもイインダヨ〜。

当時、このためだけにヤンキンを読んでましたからね。他のページは開きもしないで。
『金髪先生』と比べると、『デビューマン』はコマの密度と小ネタが5割増し。POPもギャグも格段にパワーアップしています。ネタに合わせて絵柄も七変化し、ハンパない形態模写がまた楽しい。
ギャグ漫画としてもストーリー漫画としても、最高のボルテージを持っていました。
すべてのギャグ漫画は「読者を笑わせる」という性質から、どこかマヌケだったりダサかったりするもんですが、これにはそんな要素が微塵も感じられません。
今読んでも大爆笑! というのはこれまで紹介した『地獄甲子園』『お父さんは心配症』も同じですが、それらとは違う、色あせない〈新しさ〉がこの作品にはあったのです。
当時の高校生の風俗をふんだんに取り入れ、時代を感じさせる部分も多いのに、いつまでも最先端に感じるのは何故?
それは、このパワーの影響を受けたギャグ漫画が少ないからかもしれません。
革命的作品の後は、多くの二番煎じが生まれることはみなさんもご存知の通り。しかし、吉本漫画の舞台はヤンマガではありませんでした。ジャンプでもスピリッツでもありませんでした。そのため、幸か不幸か知る人ぞ知る名作となってしまったのです(ヘタに真似てる作品はいくつかありましたが、ギャグとして以前に漫画として成立してないものばかりでした)。
その姿は孤高の花。オンリーワンなラストワン。時代を作らなかったイコール、古臭さを感じさせない。
……しかし、万人に知られなかった理由は掲載誌がヤンキンだったからだけではありませんでした。あまりにも休載が多かったのも大きな要因。悲しい事実です。
月2回発行のヤングキングでスタートしたにもかかわらず、全18話の掲載にかかった月日は5年。超遅いドモホルンリンクルみたいな製造過程。絞り切るような一滴一滴。
2巻が発売されたのは、1巻発売の7年後というのだから、泣かずにゃぁいられませんよ。
7年て! 小学校もひとまたぎだよ!
でも……信じて待っててよかった……! 7年越しの再会!
嗚呼どうか、単行本に収録されていない作品もまとめて出しとくれ! アタシが生きている間によぉぉ……!
まったく、天才的センスの持ち主はすべからく、天才的気まぐれ屋さんなのでしょか。
いえ、笑いへの飽くなき探究心が、同じものを描き続ける行為を許さず、作家を苦しめてしまっているのでしょう。
岡田あーみんも自ら筆を折り、望月峯太郎も古谷実も早い時期にギャグ業界から去っていきました。
それを思うと、漫☆画太郎のタフさ加減に改めて……
(まぁ、画太郎はうまく〈コピー〉〈ワンパターン〉を芸にすることができたので、ギャグ作家が陥りやすい闇にはまらずにすんだのかもしれませんね。
お笑い芸人も〈お約束〉といういか、パターン化したギャグを持たないと、ネタを生み続けるのは難しいですもんね。)
……そんな、奇跡の雫『デビューマン』。
どうぞ、ミラクル気分を味わいながらお手にとってくださいませ。
リーズナブルでコンパクトな全2巻。未完です。ううっ、その後の6人とか滅茶気になるのにな……丁寧に作られた美味しい設定なのに……。
ちなみに、その前に連載された『うさうさにゃんにゃん』も全1巻で未完。デビューから10年以上経つのに、吉本蜂矢の単行本はたった3冊だけという寡作っぷり。いやー、初心者にも入りやすくてありがたいですねぇ、ハハハハハ。
『デビューマン』後も、オリンピック並みの間隔で作品を発表したりしなかったりな作者。
とにかく傑作ですので、もっと認知されてほしいです。Amazonではイメージすら貼られてねぇし。
(過去に布教したことはあるんですけど、残念ながら友達の反応はイマイチ。あ〜、蜂矢ワールドを語り合える友がほしい。もっと堪能したい。過去の同人誌とかも読んでみたいんだよぉ〜。)
ちなみに、『デビューマン』の1巻はばちかぶりの歌詞がチラリとあるのもミソ。それだけで、センスの如何はミミカキユーザーには言わずもがなですな。
そんなとこも個人的にDestiny感じちゃってたり……万感の思いをのせ、汽車はゆく……。
――というわけで以上、ゆすら的3大ギャグ漫画でございました。
少年誌、少女誌、青年誌から選りすぐりの3作。いかがでしたでしょう。愛、伝わりましたか?
よかったら、みなさんの3大ギャグ漫画も教えてくださいね。マンガレビューなんぞやらせてもらってるゆすらですが、実は漫画好きのリアルな友達ってほとんどいないんです(これまで漫画好きをあまり表に出さなかったんで)。
なので、今更ながら「漫画について大いに語り合いたい欲求」が芽生えちゃってたり。やろうぜ、漫画トーク。くわしくはないんですけどね。
……っと、次の更新が「ミミィ&カッキー」でのラストの更新になる予定です。
このしらゆり荘から引越すのはさみしいですが、ラストまで楽しく語れたらなと思います。
いつも読んでくださるみなさま、ありがとうございます!
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