女のギャグ漫画は肥大した自意識の暴走である『乙女ウイルス』
前回は、大好きな〈オムニバス漫画〉の話をしたので、今回は大好きな〈オムニバス恋愛ギャグ漫画〉を紹介しましょう。
〈恋愛漫画〉のオムニバスといえば谷川史子の右に出る者はないと思うんですが、〈恋愛ギャグ漫画〉なら、鈴菌カリオの『乙女ウイルス』ではないでしょうか。
「IKKI」にて2005年7月〜2007年8月まで連載されたオムニバスコメディ。ええ、連載誌は少女誌でなく少年誌なんです。しかし、これはまごうことなく少女漫画。↑の全3巻の表紙がまたキュートじゃありませんかっ。乙女で、ウイルスで、このPOPさと来りゃあ、胸躍らずにはいられない!
(個人観測内ですが、ヴィレッジヴァンガードでよく平積みされてました)
どんな内容か説明する前に、2巻・3巻の帯コメントを見てみましょう。
あー……すでに、この人選だけで作風を表わしちゃってるし。昔の私屋カヲルとは、もちろん『少年三白眼』のことだし、ジョージ朝倉なら『カラオケ・バカ一代』。ああ、「カラバカ」(not空バカ)よりちょいあとの連作『恋文日和』全3巻は、『乙女ウイルス』と通じるところがありすぎるなぁ。追加で岡田あーみんか新井理恵か尾玉なみえが帯コメントを書いてたら、リー即ツモで裏ドラ3つって感じ。ハネマン倍満で。
つまり、『乙女ウイルス』はギャグ出身の女性漫画家が若い衝動に身もだえしながら描く典型的なギャグ漫画なんですよ。先達の轍を1mmも外れずブッ飛んでいる。律儀な足取りでレールを暴走している。
(ちなみに1巻の帯は「漫画ばかり描いていないで、たまには実家に帰って親孝行して下さい。」という、鈴菌母からの言葉でした)
『乙女ウイルス』を読むと、女性ギャグ漫画家が少ない理由、ギャグから卒業してしまう理由が、うっすら見えてくる気がします。
嗚呼ァ〜、なんだ、この、身を刺すような叙情は。
ギャグなのにコメディなのに、「あ゛ー」って発声しながら耳に栓をしたくなる感じ。なかったことにして走り出したい衝動。
残念な青春時代を送る女子にありがちな、肥大した自意識に自爆して自滅しちゃうアレやコレや。恋愛だけに留まらず、友情においても発動しまくる空回り(少女時代の友情は、かぎりなく恋愛の独占欲に近いからね!)。恥ずかしくて、でも止まらなくて、かろうじてギャグで取り繕ってるけど本人は超真剣。自虐。いたたまれない青春劇。喪女の黒歴史。10年経っても20年経っても、ふいに思い出して「うっ!」っと嗚咽させる罪な記憶。ははは。笑えない笑えない。これは全然笑えないよ。ギャグだけどギャグじゃない。コメディだけどコメディじゃない。だって、誰もボケてないんだもの。本気なんだもの、みんな。みんな=自分。何て呼ぶんだろうね、この少女期の痛々しい症状は。肥大する自意識と自意識からの逃避行動。イタチゴッコ永久機関。中二病というか小五病というか……ああ、そうか、〈乙女ウイルス〉か。

思い返せば、少女漫画家の描くギャグ漫画は、すべてこの〈乙女ウイルス〉のようなものではないでしょうか。『少年三白眼』も『恋文日和』も『ルナティック雑技団』も『×-ペケ-』も『純情パイン』も、みな肥大した自意識の空回り劇です。自意識過剰なら男子にもあるけど、乙女はその斜め上を行く。愛情と憎悪を嫉妬とロマンティックが、カオティックに絡まり合うからね。
だから、卒業も早い。中二病も小五病も、短期的症状故にそんな病名なわけで。乙女ウイルスなんてやっかいな悪玉菌、普通の女性なら描き記すことすら不可能。対面して記したとて、10年も20年も付き合うのは無理です。私屋カヲル、ジョージ朝倉はギャグから転身し、岡田あーみんは漫画家を引退しました。尾玉なみえは……はは、とんだミュータントもいたものですね。
(自意識過剰系ギャグ漫画の男子版はと問われれば、『行け!稲中卓球部』を挙げます。古谷実もまた自意識の闇を見つめすぎた故、シリアスへ転向しましたし)
冒頭で、鈴菌カリオの『乙女ウイルス』は〈オムニバス恋愛ギャグ漫画〉と書きましたが、誤りでした。すみません、『乙女ウイルス』は〈オムニバス恋愛シリアス漫画〉でした。或いは〈乙女ウイルス症例報告書〉とでも。
ああ、痛い。痛いのに、寄り目がちの大きな少女の瞳が、アタシを捕らえて離さない。彼女は自分すら見えてないってのによぉ。
現在、鈴菌カリオは「IKKI」にて『Sillyなコダマ』を連載中です。
こりゃまた、やっかいなディスコミュニケーション炸裂ですな。
リツ子さんがいうところの「ヤマアラシのジレンマ」ですね。「素直にいえば一発で終わんじゃねーの!?」っつーところを、まわりくどくグダグダグダグダやるのが、少女漫画の醍醐味。痛々しく、空回り奮闘中です。キャハ☆
思春期という名の多面鏡地獄『×-ペケ-』
こどものじかんのこども『少年三白眼』
あーみんの固有結界『お父さんは心配症』
〈恋愛漫画〉のオムニバスといえば谷川史子の右に出る者はないと思うんですが、〈恋愛ギャグ漫画〉なら、鈴菌カリオの『乙女ウイルス』ではないでしょうか。
「IKKI」にて2005年7月〜2007年8月まで連載されたオムニバスコメディ。ええ、連載誌は少女誌でなく少年誌なんです。しかし、これはまごうことなく少女漫画。↑の全3巻の表紙がまたキュートじゃありませんかっ。乙女で、ウイルスで、このPOPさと来りゃあ、胸躍らずにはいられない!
(個人観測内ですが、ヴィレッジヴァンガードでよく平積みされてました)
どんな内容か説明する前に、2巻・3巻の帯コメントを見てみましょう。
「昔の自分を見るようでつらい。」 ―――私屋カヲル
「こんなイカした名で領収証もらってる女のマンガは やっぱりどうかしてました。」 ―――ジョージ朝倉
あー……すでに、この人選だけで作風を表わしちゃってるし。昔の私屋カヲルとは、もちろん『少年三白眼』のことだし、ジョージ朝倉なら『カラオケ・バカ一代』。ああ、「カラバカ」(not空バカ)よりちょいあとの連作『恋文日和』全3巻は、『乙女ウイルス』と通じるところがありすぎるなぁ。追加で岡田あーみんか新井理恵か尾玉なみえが帯コメントを書いてたら、リー即ツモで裏ドラ3つって感じ。ハネマン倍満で。
つまり、『乙女ウイルス』はギャグ出身の女性漫画家が若い衝動に身もだえしながら描く典型的なギャグ漫画なんですよ。先達の轍を1mmも外れずブッ飛んでいる。律儀な足取りでレールを暴走している。
(ちなみに1巻の帯は「漫画ばかり描いていないで、たまには実家に帰って親孝行して下さい。」という、鈴菌母からの言葉でした)
『乙女ウイルス』を読むと、女性ギャグ漫画家が少ない理由、ギャグから卒業してしまう理由が、うっすら見えてくる気がします。
なんかついすぐ異性を好きになっちゃったりとかして色々辛い事は沢山あるけれど、私たちは必ず守り続ける純潔を。運命の人に出会うその日まで。
―――Episode3「ゴールデンボールZ」
僕は超かわいい男の子。そうみんなの人気者さ。僕の歩いた足跡にはチューリップが咲くよ。歌を口ずさめばカナリヤがハモりに森から飛んでくるよ。なのに、どうして、あの女は…どうして…どうして…どうしてどうして海はしょっぱいの? 宇宙は膨張してるって本当? 赤ちゃんはどこから来るの? プランクトンは………
―――Episode4「ウルトラプリティ」
「ぜんっぜん満たされな――い!! な――い なーい… むしろ空し過ぎて死にたくなるぞこれは凄い。凄いぞ。この路線で欲求を満たしているアイツはやっぱりおかしい。気持ち悪い。ド変態。少しでも共感した私が間違いだったわ最っっ低!! ううう〜〜〜こんなに私が苦しんでるのに夜は明け、何も知らないしーちゃんは妻と娘と遊園地だなんて………しーちゃんに会いたい。そして邪魔をしたい……でも、そんな事したら絶対嫌われる……」
―――Episode9「鹿祭り」
嗚呼ァ〜、なんだ、この、身を刺すような叙情は。
ギャグなのにコメディなのに、「あ゛ー」って発声しながら耳に栓をしたくなる感じ。なかったことにして走り出したい衝動。
残念な青春時代を送る女子にありがちな、肥大した自意識に自爆して自滅しちゃうアレやコレや。恋愛だけに留まらず、友情においても発動しまくる空回り(少女時代の友情は、かぎりなく恋愛の独占欲に近いからね!)。恥ずかしくて、でも止まらなくて、かろうじてギャグで取り繕ってるけど本人は超真剣。自虐。いたたまれない青春劇。喪女の黒歴史。10年経っても20年経っても、ふいに思い出して「うっ!」っと嗚咽させる罪な記憶。ははは。笑えない笑えない。これは全然笑えないよ。ギャグだけどギャグじゃない。コメディだけどコメディじゃない。だって、誰もボケてないんだもの。本気なんだもの、みんな。みんな=自分。何て呼ぶんだろうね、この少女期の痛々しい症状は。肥大する自意識と自意識からの逃避行動。イタチゴッコ永久機関。中二病というか小五病というか……ああ、そうか、〈乙女ウイルス〉か。

思い返せば、少女漫画家の描くギャグ漫画は、すべてこの〈乙女ウイルス〉のようなものではないでしょうか。『少年三白眼』も『恋文日和』も『ルナティック雑技団』も『×-ペケ-』も『純情パイン』も、みな肥大した自意識の空回り劇です。自意識過剰なら男子にもあるけど、乙女はその斜め上を行く。愛情と憎悪を嫉妬とロマンティックが、カオティックに絡まり合うからね。
だから、卒業も早い。中二病も小五病も、短期的症状故にそんな病名なわけで。乙女ウイルスなんてやっかいな悪玉菌、普通の女性なら描き記すことすら不可能。対面して記したとて、10年も20年も付き合うのは無理です。私屋カヲル、ジョージ朝倉はギャグから転身し、岡田あーみんは漫画家を引退しました。尾玉なみえは……はは、とんだミュータントもいたものですね。
(自意識過剰系ギャグ漫画の男子版はと問われれば、『行け!稲中卓球部』を挙げます。古谷実もまた自意識の闇を見つめすぎた故、シリアスへ転向しましたし)
冒頭で、鈴菌カリオの『乙女ウイルス』は〈オムニバス恋愛ギャグ漫画〉と書きましたが、誤りでした。すみません、『乙女ウイルス』は〈オムニバス恋愛シリアス漫画〉でした。或いは〈乙女ウイルス症例報告書〉とでも。
ああ、痛い。痛いのに、寄り目がちの大きな少女の瞳が、アタシを捕らえて離さない。彼女は自分すら見えてないってのによぉ。
現在、鈴菌カリオは「IKKI」にて『Sillyなコダマ』を連載中です。
阿童ぐりまに恋をした女子高生・尻井コダマ。コダマは己の知らぬ間に「尻子玉」を猛烈に輝かせていた。それを見て怯むぐりま…なぜなら彼の正体は河童なのでした! ぐりまの双子の姉・るりだやコダマの親友・京子も入り乱れての恋騒動…その行方は!? 奇怪痛快ラブコメディ!
IKKI 連載作品紹介−Sillyなコダマ
こりゃまた、やっかいなディスコミュニケーション炸裂ですな。
リツ子さんがいうところの「ヤマアラシのジレンマ」ですね。「素直にいえば一発で終わんじゃねーの!?」っつーところを、まわりくどくグダグダグダグダやるのが、少女漫画の醍醐味。痛々しく、空回り奮闘中です。キャハ☆
思春期という名の多面鏡地獄『×-ペケ-』
こどものじかんのこども『少年三白眼』
あーみんの固有結界『お父さんは心配症』
コメント
この記事へのコメント
東村アキコは?
> 東村アキコは?
東村アキコも痛々しい描写が上手いですね! 思春期の肥大した自意識故――というよりは、痛々しさと上手く付き合える大人だな〜って印象です。
コメントを投稿する
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://yusurakinaco.blog92.fc2.com/tb.php/199-51c3957c