第16回 「手作り子供」作ろう『団地ともお』

さてはて、最後の更新でございます。
ラストを飾る漫画は……ダララララララ(ドラの音)、ジャン! 『団地ともお』です。

以前、「激談!ひとりごと…」にてミジンコさんがリクエストしてくださった作品です。今更&及ばずながらではありますが、それにお応えして当連載の更新を締めさせていただこうかと思います。どうぞ、しばしのお付き合いをば。


小田扉にはじめて出会ったのは「QuickJapan」。2002年に連載された『ブリトビラロマンSF』が初見でした。が、当時はピンと来ず。「これはすげぇ!」とうなったのは、友達から『○被警察24時』を借りたときでした。のらりくらりと読者を惑わすテクニックに、脱力しつつも脱帽したものです。

ところがそれからタイミングが合わずというか日々に追われてというか、小田漫画に親しまず時が過ぎ行きます。
改めて再会するのは数年後。2007年の本日でありました。ミジンコさんのリクエストがあったから手に取れたのです。あ〜、ありがて〜。



『団地ともお』は、枝島団地29号棟に住む小学4年生、木下ともおが主人公の物語です。ともおとその家族、そのクラスメイト、上級生、下級生、先生、校長、団地の住民、高校生……と、ともおを中心、あるいは外野とした出来事を描いた日常漫画なのです。
男の子版『ちびまる子ちゃん』と言えばわかりやすいですが、じわりと迫りくる空気の濃度はダンチ(団地と段違いをかけたステキなギャグ)。
笑いの作り方はシュール卑近。物語の落とし方は冷めてるようでしんみり過剰に走らないが地味なだけでは終わらない。微っ妙〜な、小田ワールドとしか言いようのない世界を展開してくれてます。つるりと心の隙を突きまくり。まるで釣り上げた魚のバケツをひっくり返すみたくね。

コマの密度もまた、薄いよーで濃い〜かったり。
線はヒョロヒョロ頼りないのに、情報量てんこもり。現実と同じ瞬間が、紙の上に流れているような感覚。
いかにも「漫画」チックな「記号だけのコマ」がないんですね。キャラはセリフを吐くだけの道具にあらず!

例えば1巻の11ページ、夏休みの朝に起きたともおが、母から500円をもらって出かける姉を目撃し憤慨する場面。目撃してから「姉ちゃん金もらってた!!」と非難するまでの間に、何気なくブラシで髪をとき(4コマ目)、寝癖(2コマ目)を直す(6コマ目)そつのないともお。しかし、この一連の情報は物語にまったく関係ありません。
例えば1巻22・23ページ、夏休みの予定表をつくるともおと吉本の思考が、円グラフ→丸型蛍光灯→PSソフトと、スムーズに遊びに変換される行程。それはゆるやかな連想ゲーム。
例えば1巻74ページの最後のコマの、こわい島田さんから逃げてきたともおと吉本の場面。「何やっても島田さん怒るよなー。」と言いながらの水浴びは、無駄にリアルな夏
例えば1巻87ページの穴埋めの落書きは、うなだれる髪の長い少女ふたりで、79ページ5コマ目のふたりの髪が伸びた姿だったり。
この、一連の情報は物語にまったく関係ありません。(2回目)
が、それらの無意味なオンパレードが読者をクスリとさせる。ツボをぐいぐい押してくるのです。むしろ、それらが小田ワールドのメインディッシュと言わんばかりに。
鋭い日常へのメスと、不条理。その両天秤にアタシ達はやられるのだ。

ともおの父は単身赴任で、ともおは基本的に父の不在をさみしく思っています。いつもバカばかりやってる彼ですが、父親との話ではかわいく見えちゃうのも憎い。ムカつくガキの、意外なさみしい一面ってもう、コロリ。
父親の顔が描かれないのもオモロイですね。どのコマでも後姿や陰でトップシークレットフェイス。まるで足長おじさんのような存在感。これまた、作品に不思議な深みを与えているんですねぇ。隠す必要なんぞ、ねえのに!

(劇中劇の『スポーツ大佐』もイイ味です。ともおが読んでる漫画だからって、遠慮なさすぎるシュール。小田扉の中の「吉田戦車メソッド」が炸裂してる感じです)

また、ネタばかりでなく感動をも味わわせてくれるのが、『ともお』のスゴイところ。
「今、オレの目の前で食ってくれ……!」「親父は俺達にこの世界を遺してくれたんだぜ!! こんなのつかいきれないよなぁ!!」「その『なんとなく』に救われた… この気まぐれ天使め!!」なんてセリフには、じ〜んとせずにいられませんよ。もちろんストーリー込みで響くセリフですので、未見の方は読むべし読むべし。

小ネタ探しゲームと、ふいに襲ってくる感動
この「アメとムチ」にハマれば、誰もが小田ワールドのトリコです。病みつきになること間違いなし。


絶賛連載中の『団地ともお』は、1話完結形式。ともおは小学4年生のまま成長しません。
『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』を見ればその形式を選んだのは当然ですが、小田扉がその道を繰り返すのは、やはり彼が読み切りの人だからではないでしょうか。

何を隠そう、アタシは短編集『そっと好かれる』『男ロワイヤル』収録の女トリオ物語の方が好き。『ともお』より、お気になのだ。小田扉の真骨頂だと思っています。



クラスメイトの角山君に恋し、母を恋しながらひとり暮らしをする女子高生の古野さん。課長の好みの女になるため、下の歯で上の歯を押さえギリギリむき歯で出っ歯矯正をしているOLの野木さん。アタッチメントの高枝切りバサミと共に生活する失恋女、釣りは必ず邪魔する高枝さん。3人が繰り広げる、めくるめく女のパッションが静かに熱い! 激しい!

3人は同じアパートに住んでいます。この連作を『団地』に倣って名付けるなら、『アパート古野』とでもなるんでしょうか。『アパート野木』でもいいけど。
『団地ともお』といい『江豆町-ブリトビラロマンSF』といい、小田扉は〈ひとつの町で起こる人間模様〉というテーマが好きなようです。
これは、作者のフェイバリット『ジョジョの奇妙な冒険』の影響ではないかしらん。町民の関係の築き方は双方とも絶品。アタシも好きだな〜、4部。

『アパート古野(仮)』は、ネジの外れた女3人の挙動が魅力で、且つ、侘しい作品です。この生々しさ、躍動感、たまらん!
小編『私のおじさんの含み笑い』『ともみの親友』という少女を主人公にした作品も、無気力な良作です。

小田扉は、女主人公の話の方が面白い。
女のキャラクターが輝いて見えちゃうのは、アタシが同性だからでしょうか。いや、シュールは女子に宿ってこそ開花するからだ! 不思議ちゃんって魅惑的だもん、男にとっても女にとっても。
これからも小田扉ガールに心わしづかみな予定のアタシであります。もちろん、ともおにもね。


――てなわけで以上、ゆるゆる小田扉レビューでした。やっぱり、ぬるい締め。

これが「ミミィ&カッキー」での最後の更新です。
4ヶ月という短い期間でありましたが、お付き合いくださりありがとうございました。ここで連載できたのは大変幸福でありましたよ。

改めて吉村編集長様、うどん運営者様。
漫画にくわしくもない粗忽者に場を貸していただき、大感謝です。言葉をかけてくださったメンバー様、ユーザー様にも感謝の気持ちでイッパイです。

ミミカキは漫画情報源としても重宝してました。
狐蓋。さんのひとりごと『トトの世界』『大阪ハムレット』にも気になって手を出したりしたし。みなさん、趣味がいいからありがたかったわ〜。

さて、3月から「きなこ餅コミック」は、ブログに形を変えて再スタートいたします。お引っ越し先はこちら。ミミカキの日、3/3オープン予定地であります。
今後の更新はニュー掲示板でお知らせさせていただきますね。また感想いただけると、ゆすらは喜んでジャンピングスクワットいたします。これからも何卒、変わらぬご愛顧の程をば。

さようなら、そしてありがとう、しらゆり荘! ミミィちゃん、カッキーくん!

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寝る前に読むマンガ11 「団地ともお」小田扉

最近毎晩読んでますこの作品、もの凄いオススメなのだが、内容をどう表現したらいいものか。一見ノスタルジー漫画だが、そうではない。ほのぼの系コメディとも言いきれない。団地に住む小学生「木下友夫」を主人公に、1話完結形式で毎回手を変え品を変え、笑い

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