第26回 少女を育む不思議な生き物と、もうひとりの少女『ミヨリの森』
仕事が片付かず、イッパイイッパイな日々を送っているゆすらですが、8/25(土)21時から放送されるアニメ『ミヨリの森』は、とっても楽しみ!
大好きなマイナー漫画の、まさかのアニメ化。監督は『もののけ姫』や『時をかける少女』の美術監督、山本二三!
情報を知った先月からワクテカで待っておりましたよ。てなわけで、今回は原作『ミヨリの森』の魅力を、放送に先駆けて紹介しちゃいます。
★少女★
『ミヨリの森』の作者は、「アフタヌーン」でデビューした小田ひで次。寡作ながら『拡散』『クーの世界』という名作を生み出し、コアなファンを作ってきました。
『クーの世界』『ミヨリの森』の主人公は少女。
少女は小田ひで次の重要なテーマであり、永遠の命題です。ファンはその少女の描写力と魅力に、心奪われるのです。
いわゆる二次元少女が持つ可愛らしさ、萌えとは真逆を走る、独特オーラ。生々しさと幻想を併せ持ち、神々しき光を、彼の産む少女達は放ってます。触れれば壊れる女神達よ!
作者に宿る現実の少女への親しみと尊敬が、この繊細でリアルな少女像を形成しているのでしょう。愛でるような優しさが、ページからにじみ出ています。
★ミヨリ★

『ミヨリの森』の主人公、真縞ミヨリ。
母親が男と失踪したため、ド田舎にある祖母の家にあずけられるハメになった、かわいそうな小学6年生です。幼い頃から両親のケンカばかり見てきたため、他人に心を開かず、近付く人には強固な壁でガードします。
そんな人間不信のミヨリは、生きるために空想癖を身につけます。自分を小説の中の一人物と捉え、出来事をブツブツとナレーションしては、認めたくない現実を虚構に変えていくのです。
勝気で意地っ張りな都会の少女。
祖母の所有する森と出会うことで、彼女の心は次第に変わっていきます。
★小田ひで次の世界★
ミヨリは、森の中で不思議な生き物に出会います。
森の番人ボクリコ、悪い夢を食べるモグリ、川に捨てられたものを勝手に届けてくれる川の住人カノコ……。
ミヨリにしか見えない森の精霊たちも、この漫画の魅力のひとつ。その、気味悪さと可愛さの紙一重といったら!
昔から、小田ひで次の描く世界観は、ジブリと通じるものがありました。
今作では、まず誰もが『となりのトトロ』を思い出すことでしょう。「森と少女」といえば、これを置いて他にありませんからね。
トトロの壮大な森が好きな人は、きっとミヨリの森も気に入るはず。
でも、精霊の生々しさは『千と千尋の神隠し』の方が近いかな。『もののけ姫』もありだな。『かみちゅ!』ほど人為的でなく、考古学の本に載っててもおかしくない、説得力のあるキャラクター造詣なのです。
ジブリっぽいのは、世界観だけではありません。少女の持つエロスもまた、相通ずるところ。
しかも、こちらはセル絵でなく、肉感的な漫画絵です。内包するエロ度も、倍のバイ。とくに鼻と唇の艶かしさはたまらんものが!
物語がストイックに準ずるほど、余計にエロティックを感じてしまうのは、何故なのでしょう。
★少女の初恋★
趣味なのか憧れなのか、「少女と、たよりない兄(的存在の男性)の恋」も、小田ひで次作品の要となっています。前作『クーの世界』でも、重要なテーマでした。
今作では、続編にあたる『ミヨリの森の四季』で、ミヨリの淡い恋心が描かれています。
勝気なはずなミヨリの、初恋に対する戸惑いと照れがっっ! ちょっとツンデレ入ってるし!
しかし、恋しさ故に「嫉妬」を覚えてしまったミヨリは、まるで自分が自分を捨てた母親のようだと、悩み苦しみます。
気づくと、いつもそばにいて助けてくれた精霊達の姿も見えなくなっていて……。
ここらへんは、ちょっと『魔女の宅急便』を彷彿としますね。
恋は、無垢な少女時代の終焉。愛しさと憎しみを知って、人は大人の階段を登れるんだよね……!
ミヨリもキキのように恋を経て、女として魔女として成長していきます。
★そして少女は少女と出会う★
しかーし、そんな恋心は重要ではあっても、崇高な少女の最終形態にはなりえません。
小田ひで次が描く「年上の男に憧れる少女」は、一見、作者の願望とも見えますが、そこらにはびこる単純なロリコン根性とは一線を画します。初恋成就でハッピーエンド!など、言語道断。
所詮、大人の女性に向き合えない男など、きまぐれな少女に遊ばれたあげく逃げられる、哀れな存在。
彼女達にとって最も大事な存在は、共に成長しあえる少女に他なりませんから。
今まで見えなかった自分、目を背けていた自分を、鏡のように映し出す、もうひとりの少女。
少女は他者として自分に出会い、弱さと醜さを知って、成熟していくのです。これは、一時の気の迷いのような恋心と違い、憎しみとも友情ともつかぬ、強い絆。永遠の百合感情なのです。

そんな、かけがえのないミヨリと華枝の出会いは、『ミヨリの森の四季』の中盤から。
アニメでは描かれないと思うので、どうぞ手に取って読んでください。そして、ふるえながら手をつなぐ、ふたりのうしろ姿を瞼に焼き付けて……!
『電脳コイル』のヤサコとイサコの関係に釘付けの方には、とにかく必見ですから。
前半に出てくるミヨリの初恋相手、朔也など、ただのあて馬にすぎんわ!
――さて、かなりジブリ作品を引き合いに出し紹介してきましたが、けしてこの作品がその模倣に陥ってるのではないことを、最後に付け加えておきます。
読めばわかることですが、小田ひで次の描く少女は、ジブリヒロインとはまったく違います。例えるなら、『カリオストロの城』の峰不二子と原作の峰不二子ぐらい、似て異なるものと言いましょうか。目指してる方向は真逆。また、小田ひで次オリジナルの魅力が、物語やキャラクターに溢れているので、ご安心を。
この記事で、少しでも〈ひで次ワールド〉を気になってくださったなら、とりあえず明日のアニメをチェック!
ま、現時点ではアニメの出来などわからないですけどね。ステキな作品に仕上がっていると、信じるばかりです。そして是非、原作へ! 奇妙な精霊達が、あなたのお越しを待ってますから。
+ + 2007/08/26追記 + +
↓10秒でわかる、放送後の巷の反応。
教えて!goo ミヨリの森って平成狸合戦と・・・
大好きなマイナー漫画の、まさかのアニメ化。監督は『もののけ姫』や『時をかける少女』の美術監督、山本二三!
情報を知った先月からワクテカで待っておりましたよ。てなわけで、今回は原作『ミヨリの森』の魅力を、放送に先駆けて紹介しちゃいます。
『ミヨリの森』の作者は、「アフタヌーン」でデビューした小田ひで次。寡作ながら『拡散』『クーの世界』という名作を生み出し、コアなファンを作ってきました。
『クーの世界』『ミヨリの森』の主人公は少女。
少女は小田ひで次の重要なテーマであり、永遠の命題です。ファンはその少女の描写力と魅力に、心奪われるのです。
いわゆる二次元少女が持つ可愛らしさ、萌えとは真逆を走る、独特オーラ。生々しさと幻想を併せ持ち、神々しき光を、彼の産む少女達は放ってます。触れれば壊れる女神達よ!
作者に宿る現実の少女への親しみと尊敬が、この繊細でリアルな少女像を形成しているのでしょう。愛でるような優しさが、ページからにじみ出ています。

『ミヨリの森』の主人公、真縞ミヨリ。
母親が男と失踪したため、ド田舎にある祖母の家にあずけられるハメになった、かわいそうな小学6年生です。幼い頃から両親のケンカばかり見てきたため、他人に心を開かず、近付く人には強固な壁でガードします。
そんな人間不信のミヨリは、生きるために空想癖を身につけます。自分を小説の中の一人物と捉え、出来事をブツブツとナレーションしては、認めたくない現実を虚構に変えていくのです。
私は……
かすがいになれなかった罪で島流しの刑にあうんだね………
見ず知らずの父の実家へ幽閉されるんだ 人身御供になるんだ……
いいんだ…… どうせもう私の人生おしまいなんだ……
(『ミヨリの森』 Story1 捨てられたミヨリ)
勝気で意地っ張りな都会の少女。
祖母の所有する森と出会うことで、彼女の心は次第に変わっていきます。
ミヨリは、森の中で不思議な生き物に出会います。
森の番人ボクリコ、悪い夢を食べるモグリ、川に捨てられたものを勝手に届けてくれる川の住人カノコ……。
ミヨリにしか見えない森の精霊たちも、この漫画の魅力のひとつ。その、気味悪さと可愛さの紙一重といったら!
昔から、小田ひで次の描く世界観は、ジブリと通じるものがありました。
今作では、まず誰もが『となりのトトロ』を思い出すことでしょう。「森と少女」といえば、これを置いて他にありませんからね。
トトロの壮大な森が好きな人は、きっとミヨリの森も気に入るはず。
でも、精霊の生々しさは『千と千尋の神隠し』の方が近いかな。『もののけ姫』もありだな。『かみちゅ!』ほど人為的でなく、考古学の本に載っててもおかしくない、説得力のあるキャラクター造詣なのです。
ジブリっぽいのは、世界観だけではありません。少女の持つエロスもまた、相通ずるところ。
しかも、こちらはセル絵でなく、肉感的な漫画絵です。内包するエロ度も、倍のバイ。とくに鼻と唇の艶かしさはたまらんものが!
物語がストイックに準ずるほど、余計にエロティックを感じてしまうのは、何故なのでしょう。
趣味なのか憧れなのか、「少女と、たよりない兄(的存在の男性)の恋」も、小田ひで次作品の要となっています。前作『クーの世界』でも、重要なテーマでした。
今作では、続編にあたる『ミヨリの森の四季』で、ミヨリの淡い恋心が描かれています。
勝気なはずなミヨリの、初恋に対する戸惑いと照れがっっ! ちょっとツンデレ入ってるし!
しかし、恋しさ故に「嫉妬」を覚えてしまったミヨリは、まるで自分が自分を捨てた母親のようだと、悩み苦しみます。
――……人はね なりたくない人間になりがちなのよ!
あんたには私の血が流れてるんだからね!――
「いやだ! いやだ!!
そんな言葉がほしかったんじゃない……!」
(『ミヨリの森の四季』 第3話 精霊が消えた森)
気づくと、いつもそばにいて助けてくれた精霊達の姿も見えなくなっていて……。
ここらへんは、ちょっと『魔女の宅急便』を彷彿としますね。
恋は、無垢な少女時代の終焉。愛しさと憎しみを知って、人は大人の階段を登れるんだよね……!
ミヨリもキキのように恋を経て、女として魔女として成長していきます。
しかーし、そんな恋心は重要ではあっても、崇高な少女の最終形態にはなりえません。
小田ひで次が描く「年上の男に憧れる少女」は、一見、作者の願望とも見えますが、そこらにはびこる単純なロリコン根性とは一線を画します。初恋成就でハッピーエンド!など、言語道断。
所詮、大人の女性に向き合えない男など、きまぐれな少女に遊ばれたあげく逃げられる、哀れな存在。
彼女達にとって最も大事な存在は、共に成長しあえる少女に他なりませんから。
今まで見えなかった自分、目を背けていた自分を、鏡のように映し出す、もうひとりの少女。
少女は他者として自分に出会い、弱さと醜さを知って、成熟していくのです。これは、一時の気の迷いのような恋心と違い、憎しみとも友情ともつかぬ、強い絆。永遠の百合感情なのです。

そんな、かけがえのないミヨリと華枝の出会いは、『ミヨリの森の四季』の中盤から。
アニメでは描かれないと思うので、どうぞ手に取って読んでください。そして、ふるえながら手をつなぐ、ふたりのうしろ姿を瞼に焼き付けて……!
なにを言っても今の華枝ちゃんには届きそうにないや……
まるでちょっと前の自分みたいだ………
でも…… 嫌だ! 失いたくない……!!
(『ミヨリの森の四季』 第6話 魔法の言葉)
『電脳コイル』のヤサコとイサコの関係に釘付けの方には、とにかく必見ですから。
前半に出てくるミヨリの初恋相手、朔也など、ただのあて馬にすぎんわ!
――さて、かなりジブリ作品を引き合いに出し紹介してきましたが、けしてこの作品がその模倣に陥ってるのではないことを、最後に付け加えておきます。
読めばわかることですが、小田ひで次の描く少女は、ジブリヒロインとはまったく違います。例えるなら、『カリオストロの城』の峰不二子と原作の峰不二子ぐらい、似て異なるものと言いましょうか。目指してる方向は真逆。また、小田ひで次オリジナルの魅力が、物語やキャラクターに溢れているので、ご安心を。
この記事で、少しでも〈ひで次ワールド〉を気になってくださったなら、とりあえず明日のアニメをチェック!
ま、現時点ではアニメの出来などわからないですけどね。ステキな作品に仕上がっていると、信じるばかりです。そして是非、原作へ! 奇妙な精霊達が、あなたのお越しを待ってますから。
“ミヨリは思った……
そう信じてやるしかないか……!”
“決意をあらたにするミヨリなのでした……”
(『ミヨリの森の四季』 第7話 そして風が気持ちをつなぐ)
↓10秒でわかる、放送後の巷の反応。
教えて!goo ミヨリの森って平成狸合戦と・・・
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とりあえず、マイナー作家のマイナー漫画をフジのゴールデンでアニメ化するためには、有名女優や売り出し中の女子アナを大量投入し、本来不要であるメディア的目玉を作らないといけないのは、わかる。それは仕方ない。大人の事情です。
背景がグンバツに美麗なのは当然として、それにそぐわない微妙な作画と、目に痛い色彩設定。展開のテンポの悪さも、まぁ仕方ないとして。
内容が終始「自然を大切に」「森林伐採は悪」で徹底されてたのが、ちょっとガッカリ。ターゲットを子供に絞ったら、それも仕方ないことか。今日日の子供は、物事はそんな単純ではないと、わかっていると思うけど。
原作はもっと、人間のドロドロした部分をテーマにしているのに。泉の地縛霊は成仏させるんじゃなくて(そもそもそんな簡単に成仏できるか)、憎しみを背負いながら協力しあうのが重要なのに。イヌワシなんか簡単に見つかってはいけないのに。
……否定しようと思えばたくさんできますが、とにかく小田ひで次の作品をクローズアップしてくれただけでも、ありがたいと思おう。これで原作を手に取ってくれる人が増えれば……増えるかなぁ。読んで欲しい人に訴えかけることはできなかったかも。だいたい、本そのものが書店に並んでないし。なんで未だに増刷しないとですか?
『平成狸合戦ぽんぽこ』を、さらに単純化したようなアニメでしたね。ミヨリはかわいかったけどさ。
とりあえず、普通に手に入る『ミヨリの森の四季』だけでも読んで欲しいです。切に。