第6回 少女の夢日記『ときめきトゥナイト』
30歳以上の女性に「初恋の人は?」とアンケートすれば、誰が1位になるでしょうか。
同級生? 先生? アイドル? いえいえ、もっと身近で、もっと手の届かない王子の名がトップに輝くことでしょう。元・少女達の永遠の憧れといえば――
真壁俊。
いくつのハートが彼によって奪われたでしょうか。
不良で無口で冷たくて、だけど動物には優しい母子家庭の高校生。つれないけれど決めるところはガッチリ決めるボクサー部の二枚目。
あの時代の少女の憧れを見事に具現化させたのが、誰あろう真壁俊でありました。
まず名前からしてイケメンオーラを放ってます。「まかべ」ときて「しゅん」。甘く引き締まった響きと漢字……。史上最強の組み合わせじゃないですか? 呼びたくなりますよね、「まかべく〜んっ」って!
そんな破壊力を持った名を実際に生まれ持ってしまった男子は不幸ですけどね。死ぬまで周りの期待と戦わねばなりません。十中八九、名前負け。お察しします。
そんな女の子の夢と憧憬を神技で叶えた漫画が『ときめきトゥナイト』です。

1982年から1994年まで「りぼん」に掲載された長期連載漫画です。
3部で構成され、みんなの心に多く残っているのが、やはり江藤蘭世がヒロインだった1部。
ヒーローの真壁俊を筆頭に、ありとあらゆるオイシイ設定がてんこもりでした。全国の少女は枕をヨダレで濡らし読んでいたものです。
今回は、そんな『ときめきトゥナイト』1部から、少女の心臓を貫いた「ときめき設定」10コを挙げてみようかと思います。題して《スーパーラブローション10連射》。スマシタイマヤジオトイヨチ〜。
1ラブ 狼女と吸血鬼の娘
魔法使いだとか宇宙人だとかは、もう子供っぽいご時世。ちょっぴり大人びた西洋の御伽話からおいしい要素だけを抽出し異種間交配させた主人公は、設定だけで勝ったも同然でしょ?
これが現代の世界で正体がばれないように生活すんだから、トキメティックが止まらない!
ロマンスグレーな父親が棺で寝るだけでカッコイイし!
2ラブ 江藤蘭世(えとう らんぜ)
作者、池野恋の命名センスは神か?
真壁俊といい江藤蘭世といい、どうしてこうもステキ名前が思いつくのでしょう。
フランス語で「見知らぬ人」という意味の「エトランゼ」は、そんな由来すら当時の少女には眩しかったのです。
3ラブ 噛みついた相手の姿に変身できる
吸血鬼という設定を「変身もの」に応用するこの手際のよさ!
これで「アッコちゃん」から綿々と続く「変身少女漫画」のハプニングや醍醐味をラブコメに取り込めます。あったまいー!
小鳥に変身して真壁くんからミルクをもらったり、身体検査をしたり、一緒にお風呂に入ったりしちゃうんですよ? 妄・想・全・開!
4ラブ まるいものを見ると狼耳と尻尾がはえる
狼女という設定を「けもの耳」属性にする手腕の逞しさ!
「猫耳萌え」なんて言葉のなかった時代に、この先読みっぷり! 黒髪ストレートにはえた耳の愛らさったらがたまらんですよ。
黒マントとけもの耳の配合って最高じゃん?
5ラブ 人気俳優に一目惚れされる
いい人すぎた筒井圭吾くんです(人気俳優になるのは後々ですけど)。
片想いがすぐ実っては少女漫画として成り立ちませんが、延々と想いっぱなしはつらいもんです。読む少女もつらいです。
そこで、意中のヒーローに引けを取らない容姿端麗な男性に好かれると。そうすればつらい恋心も癒され、自尊心も満たされます。相手はみんなが夢中になってるアイドル。しかも勝手にキスされちゃったりなんかしちゃったり。もてる女はつらいわ〜。
6ラブ 真壁くんが実は魔界の王子だった
王子は名実ともに王子だった!
「○○界のプリンス」という最高級の肩書きは、やはりヒーローには必須のようです。お国は「怪物ランド」ですけど。
とはいえ魔界人と人間という、道ならぬ恋に悩み苦しむのが、この作品の命題でした。彼が同じ魔界人になっては、必要不可欠な障害がなくなってしまいます。
そこで「実は魔界を追放された王子で、見つかれば殺される」という設定が+αされるわけです。この設定の乗せ具合が、うまいうまい。VIPに仲間入りしたあげく、「ロミオとジュリエット」境遇も持続されるという按配。
「彼とわたしはみんなと違う」という選民意識を満たしながら、新たな障害で恋も燃やす。……デキスギですね。
7ラブ 双子の王子に一目惚れされる
「双子の世継は凶兆。禍根を断つため一方は抹殺される」という、古来からある悲運な設定に乙女は弱いもの。
真壁くんがその片割れという真実だけでも垂涎ものなのに、さらにもう一方のアロン王子から、蘭世は激しいアタックを受けちゃいます。
王子ふたりの心を独占しちゃうなんて、これ以上豪華なハーレムがありますか? もう、世界も牛耳れそう……。
8ラブ 真壁くんが赤ちゃんになる
真壁くんが魔界の王子として生まれなおすという、とんでもない事態に! そんな展開アリですか? 予想外すぎ!
赤ちゃんになってしまった彼を、蘭世は甲斐甲斐しくも母となり育て世話します。
愛する男のオシメが変えられるなんて! 乳飲み子からショタから青年期まで!
強烈な独占欲ですね。彼女になるだけでは飽きたらず、全人生を自分色に染めたいという乙女の願望のあらわれでしょうか。
幼児プレイすらも網羅するとは……恐るべし。
9ラブ 真壁くん似のマフィアのボスに惚れられる
もう、何ソレ?
ここまでくると何がどうなってるのかさっぱりわかりませんが、とにかく、蘭世は魔族の血を引く異国の男ダーク=カルロに「結婚シテクダサイ」と求婚されます。ぶったまげです。
なかなか王子と結ばれない鬱憤を、似た男で擬似成就ということなのでしょうか。
重要な点は、顔はそっくりなのに外人(片言の日本語♪)、マフィアのボス(危険な香り♪)、年上(オトナ♪)、金髪(王子♪)という差異。完璧なグレードアップです。ぬかりありません。
それにつけても蘭世はレベルの高い男から好かれすぎですね。魔界も人間界も乗っ取るつもりですか?
10ラブ 蘭世と真壁くんは2000年前からの恋人同士
独占欲はついに前世すらも!
そこまで結ばれてないと許せませんか? 末代まで恋人でいたいですか?
尽きることない少女の希求心……それはもはやホラーなのかもしれません。
――こうして、「運命」すらも手中に収め、蘭世はめでたく真壁くんと結ばれます。
あまりにもおいしすぎる(というかトンデモナイ)展開の数々ですが、嫌味を感じずにすむのは、蘭世が頑張り屋さんでとっても一途な少女だからでしょう。あの当時、もっともオチャメで魅力的な女の子でした。
ライバルの神谷曜子も面白いキャラでしたね。
変身されたり犬にされたりと、何かと人権を無視されることが多かったですが、2部になってもイイ活躍をするんです。
「いちど本気で好きになった人となら 何度出会っても必ず恋に落ちるはずよ」は名言!
市橋なるみと江藤鈴世に世代交代した2部も好きでした。蘭世世代の人には物足りなかったようですが、アタシがリアルタイムで読んでいたのはこっちでしたので、思い入れもあります。なるみちゃん、いい子だよー。
さらに蘭世と俊の娘、愛良が主人公の3部へと続き、本編終了後もパラレルワールドとなった『ときめきミッドナイト』がはじまるなど、作者のライフワークのように物語は続いていきます。
「少女漫画版ジョジョ」と言ってもいいかもしれません(腕に星型のアザとかジョジョっぽいし!)。
少女の夢が余すところなく詰まった『ときめきトゥナイト』でしたが、果たして男子の目にはどのように映っていたのでしょう。少女漫画を読む男性はまだまだ少ないので、気になるところです。
読んだことのない殿方は、是非今宵この作品を手に取り、甘い摩訶不思議な世界を堪能してください。そして、そっと感想をお教えくださいませ。
アニメのエロいEDばかりが印象に残ってるようでは、とても王子様にはなれませんYO!
同級生? 先生? アイドル? いえいえ、もっと身近で、もっと手の届かない王子の名がトップに輝くことでしょう。元・少女達の永遠の憧れといえば――
真壁俊。
いくつのハートが彼によって奪われたでしょうか。
不良で無口で冷たくて、だけど動物には優しい母子家庭の高校生。つれないけれど決めるところはガッチリ決めるボクサー部の二枚目。
あの時代の少女の憧れを見事に具現化させたのが、誰あろう真壁俊でありました。
まず名前からしてイケメンオーラを放ってます。「まかべ」ときて「しゅん」。甘く引き締まった響きと漢字……。史上最強の組み合わせじゃないですか? 呼びたくなりますよね、「まかべく〜んっ」って!
そんな破壊力を持った名を実際に生まれ持ってしまった男子は不幸ですけどね。死ぬまで周りの期待と戦わねばなりません。十中八九、名前負け。お察しします。
そんな女の子の夢と憧憬を神技で叶えた漫画が『ときめきトゥナイト』です。

1982年から1994年まで「りぼん」に掲載された長期連載漫画です。
3部で構成され、みんなの心に多く残っているのが、やはり江藤蘭世がヒロインだった1部。
ヒーローの真壁俊を筆頭に、ありとあらゆるオイシイ設定がてんこもりでした。全国の少女は枕をヨダレで濡らし読んでいたものです。
今回は、そんな『ときめきトゥナイト』1部から、少女の心臓を貫いた「ときめき設定」10コを挙げてみようかと思います。題して《スーパーラブローション10連射》。スマシタイマヤジオトイヨチ〜。
1ラブ 狼女と吸血鬼の娘
魔法使いだとか宇宙人だとかは、もう子供っぽいご時世。ちょっぴり大人びた西洋の御伽話からおいしい要素だけを抽出し異種間交配させた主人公は、設定だけで勝ったも同然でしょ?
これが現代の世界で正体がばれないように生活すんだから、トキメティックが止まらない!
ロマンスグレーな父親が棺で寝るだけでカッコイイし!
2ラブ 江藤蘭世(えとう らんぜ)
作者、池野恋の命名センスは神か?
真壁俊といい江藤蘭世といい、どうしてこうもステキ名前が思いつくのでしょう。
フランス語で「見知らぬ人」という意味の「エトランゼ」は、そんな由来すら当時の少女には眩しかったのです。
3ラブ 噛みついた相手の姿に変身できる
吸血鬼という設定を「変身もの」に応用するこの手際のよさ!
これで「アッコちゃん」から綿々と続く「変身少女漫画」のハプニングや醍醐味をラブコメに取り込めます。あったまいー!
小鳥に変身して真壁くんからミルクをもらったり、身体検査をしたり、一緒にお風呂に入ったりしちゃうんですよ? 妄・想・全・開!
4ラブ まるいものを見ると狼耳と尻尾がはえる
狼女という設定を「けもの耳」属性にする手腕の逞しさ!
「猫耳萌え」なんて言葉のなかった時代に、この先読みっぷり! 黒髪ストレートにはえた耳の愛らさったらがたまらんですよ。
黒マントとけもの耳の配合って最高じゃん?
5ラブ 人気俳優に一目惚れされる
いい人すぎた筒井圭吾くんです(人気俳優になるのは後々ですけど)。
片想いがすぐ実っては少女漫画として成り立ちませんが、延々と想いっぱなしはつらいもんです。読む少女もつらいです。
そこで、意中のヒーローに引けを取らない容姿端麗な男性に好かれると。そうすればつらい恋心も癒され、自尊心も満たされます。相手はみんなが夢中になってるアイドル。しかも勝手にキスされちゃったりなんかしちゃったり。もてる女はつらいわ〜。
6ラブ 真壁くんが実は魔界の王子だった
王子は名実ともに王子だった!
「○○界のプリンス」という最高級の肩書きは、やはりヒーローには必須のようです。お国は「怪物ランド」ですけど。
とはいえ魔界人と人間という、道ならぬ恋に悩み苦しむのが、この作品の命題でした。彼が同じ魔界人になっては、必要不可欠な障害がなくなってしまいます。
そこで「実は魔界を追放された王子で、見つかれば殺される」という設定が+αされるわけです。この設定の乗せ具合が、うまいうまい。VIPに仲間入りしたあげく、「ロミオとジュリエット」境遇も持続されるという按配。
「彼とわたしはみんなと違う」という選民意識を満たしながら、新たな障害で恋も燃やす。……デキスギですね。
7ラブ 双子の王子に一目惚れされる
「双子の世継は凶兆。禍根を断つため一方は抹殺される」という、古来からある悲運な設定に乙女は弱いもの。
真壁くんがその片割れという真実だけでも垂涎ものなのに、さらにもう一方のアロン王子から、蘭世は激しいアタックを受けちゃいます。
王子ふたりの心を独占しちゃうなんて、これ以上豪華なハーレムがありますか? もう、世界も牛耳れそう……。
8ラブ 真壁くんが赤ちゃんになる
真壁くんが魔界の王子として生まれなおすという、とんでもない事態に! そんな展開アリですか? 予想外すぎ!
赤ちゃんになってしまった彼を、蘭世は甲斐甲斐しくも母となり育て世話します。
愛する男のオシメが変えられるなんて! 乳飲み子からショタから青年期まで!
強烈な独占欲ですね。彼女になるだけでは飽きたらず、全人生を自分色に染めたいという乙女の願望のあらわれでしょうか。
幼児プレイすらも網羅するとは……恐るべし。
9ラブ 真壁くん似のマフィアのボスに惚れられる
もう、何ソレ?
ここまでくると何がどうなってるのかさっぱりわかりませんが、とにかく、蘭世は魔族の血を引く異国の男ダーク=カルロに「結婚シテクダサイ」と求婚されます。ぶったまげです。
なかなか王子と結ばれない鬱憤を、似た男で擬似成就ということなのでしょうか。
重要な点は、顔はそっくりなのに外人(片言の日本語♪)、マフィアのボス(危険な香り♪)、年上(オトナ♪)、金髪(王子♪)という差異。完璧なグレードアップです。ぬかりありません。
それにつけても蘭世はレベルの高い男から好かれすぎですね。魔界も人間界も乗っ取るつもりですか?
10ラブ 蘭世と真壁くんは2000年前からの恋人同士
独占欲はついに前世すらも!
そこまで結ばれてないと許せませんか? 末代まで恋人でいたいですか?
尽きることない少女の希求心……それはもはやホラーなのかもしれません。
――こうして、「運命」すらも手中に収め、蘭世はめでたく真壁くんと結ばれます。
あまりにもおいしすぎる(というかトンデモナイ)展開の数々ですが、嫌味を感じずにすむのは、蘭世が頑張り屋さんでとっても一途な少女だからでしょう。あの当時、もっともオチャメで魅力的な女の子でした。
ライバルの神谷曜子も面白いキャラでしたね。
変身されたり犬にされたりと、何かと人権を無視されることが多かったですが、2部になってもイイ活躍をするんです。
「いちど本気で好きになった人となら 何度出会っても必ず恋に落ちるはずよ」は名言!
市橋なるみと江藤鈴世に世代交代した2部も好きでした。蘭世世代の人には物足りなかったようですが、アタシがリアルタイムで読んでいたのはこっちでしたので、思い入れもあります。なるみちゃん、いい子だよー。
さらに蘭世と俊の娘、愛良が主人公の3部へと続き、本編終了後もパラレルワールドとなった『ときめきミッドナイト』がはじまるなど、作者のライフワークのように物語は続いていきます。
「少女漫画版ジョジョ」と言ってもいいかもしれません(腕に星型のアザとかジョジョっぽいし!)。
少女の夢が余すところなく詰まった『ときめきトゥナイト』でしたが、果たして男子の目にはどのように映っていたのでしょう。少女漫画を読む男性はまだまだ少ないので、気になるところです。
読んだことのない殿方は、是非今宵この作品を手に取り、甘い摩訶不思議な世界を堪能してください。そして、そっと感想をお教えくださいませ。
アニメのエロいEDばかりが印象に残ってるようでは、とても王子様にはなれませんYO!
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